4_20170610執筆分

不意に僕は、その水たまりに潜り込むことを考えた。

少し後退して、勢いをつけて、水泳のように飛び込む。

ばしゃ、と体が水につかる感触がして、息ができなくなった。

僕は闇雲に、下へ下へと向かって水をかいて進む。

やがて、先のほうに光が見えた。

眩しさに目が眩みながらも、一心不乱に光を目指して泳いだ。

光に近付いて、一体になったような感覚。

僕はあまりの眩しさに、たまらず、目を閉じる。

声が聞こえる。僕の名を呼ぶ声。懐かしい声。忘れもしない。

――彼女の声だ。

しばらくして、光が弱まったのを感じて目を開いた。

すると、辺り一面、花畑が広がっていた。

桜の木が立ち並ぶ。季節は夏だったように思っていたが、

眼前には桜の花が咲き誇っている。

浮き世離れした景色に、ふと、

僕は死んだのか?

と思った。

というより、初めから死んでいるのか?

初めとはいつ?あの都市での災厄から?

あるいはもっと前から?彼女と出会った時からか?

自分が何者なのかも定かではなくなっているのを感じる。

一体僕は、どうしてこんな所にいるのだ。何故彼女を求めて、彷徨っているのだ。

分からない。だが、彼女に会わなくてはいけない。

それだけは、確信を持って感じている。

ここがどこであれ、彼女に会わなくては。何としてもだ。

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