第44話 『ゴールーっ!!』
「そんなことがあったのかっ!?…」
俺は自分の事情を話しつつ、桐崎と亀山の間に何があったのかを聞いていた。まさか、亀山がそこまでヤバかったとは…
「でも、どうして助けてくれたの?…寺島だと思い込んでて恋を応援してたんでしょ…だったら…」
「帰りのバスでたまたまな…あいつの本当の名前を知ったんだよ、そしたら誰だってコイツは何かしようとしてるって思うだろう?…だから保健室の時に止めようとしたのに…」
「ごめん…」
桐崎は驚くほど素直だった。なんかそれはそれで…ちょっと嫌だな…
「でも意外だった…あんなこと言ってたのに、ちゃんと肝試しには行ってたなんてな…」
「…まあ、別に…」
そう言いながら桐崎は視線を斜めにして髪をいじる。…さてと、時間も時間だし…
「よしっ!帰るかっ!!」
俺が立ち上がると桐崎は俺の裾を掴んだ。桐崎は目を擦り
「ごめん…まだ、あんまりよく見えてないの…」
「じゃあ、おんぶでもするか?…」
「はあっ!?…」
「しょうがないだろ…それくらい我慢しろ」
「えっ…ちょっ…」
桐崎は慌てているが、視界がよく見えないからか暴れたりは多少しか、しなかった。
「…お、重いって言わないでよっ!!」
「はいはい、…うっ!!…」
すると俺の頬を両手で強く引っ張った。こんな事なら鍛えておけば良かった…
「イタタタッ!!…言ってないだろっ!!何もっ!」
「アンタねえ!言わなくたって相手に伝わったら意味がないのよっ!!」
俺は頬を引っ張られながら森を彷徨っていた。
すると桐崎はだんだんと不安になったのか…
「アンタねえ…どこに行くつもりなの…」
「悪いな…俺は提案しときながら、くじでキャンプファイヤー担当になったんだ。だから森の事はそんな把握してないんだ」
「なんでくじなの?…普通、やりたいものをやるんじゃないの?…」
「そうするとカップル同士で選ぶだろ?…だから、くじになった。あまりにもイチャつくから…ったく、学校が恋人作れって言ったくせにな〜」
「…」
桐崎は何故か黙っている。どうしたんだ?…まさかどこに行くのか不安なのかな…
「そう不安になるなっ!!俺がいるんだからよっ!!」
だから心配なのよって言われそうだな。どっかの漫画のキャラみたいに…だが桐崎は
「別に…不安じゃないわよ。…アンタがいるし…」
「なんだ?…それは…皮肉か?」
「違うわよ、バカ…」
いつも高圧的なのに、なんかしおらしい。調子狂うな…こうなると、いつもの桐崎が愛おしいな。
「あっ!光ってるっ!!…きっと皆んないるぞっ!」
俺は光っている場所に向かった。向かってる途中に小声で
「ありがとう…いつも…いつもありがと…」
「お、おう…」
光ってる場所は、やっぱり宿だった。肝試しはまだ続いていてキャーキャーと騒いでいる。なるほど…肝試しの場所を使えば桐崎が例え悲鳴をだしても、かき消されるし目立たないと思ったのか…亀山…とんでもないやつだ。
「ねえ…せっかくなら肝試し…やりたい…」
「えっ…でも目が…」
「もう大丈夫、よくなったから…さっ!…」
「分かったよ…そんだけ元気になったなら大丈夫だろ…」
それに元々桐崎のために提案したんだからな!…俺の意見じゃないけど…
「よしっと…じゃあ行こうか!」
俺は桐崎を下ろし腰を叩きながら言った。すると桐崎は俺の腰を、思いっきり叩かれた。
「痛っ!!…」
「知らない〜」
コイツっ!!…だが、まあ桐崎はいつも通りがいいな。こうして腰を痛めた俺と桐崎で、そこまで怖くない肝試しに入った。
「これくらい別になんともないな…」
「そうね…何を皆んな騒いでいたのかしらね…」
まあ、高校生の肝試しだから、そんなもんだよな…こんなので騒ぐなんて皆んな子供だな…
って、そう油断した時茂みの中から
「…ばあーっ!!…」
「「ギャーーーーーーッ!!!!!!」」
ゆ…幽霊だ。幽霊がでた…そ、そんなまさか。
今までエンタメだけの世界にしかいないと思っていたものが本当にいたのかっ!!…
「…いや…私だよ…」
「えっ…き、霧島…」
よく見ると分かりやすい幽霊のコスプレをしている霧島だった。まさか本当に、前みたいな驚かせ方法を実行するとは…
「な、なるほど…これねー…」
「ああ、これが皆んなが騒いでいた原因か…」
「あのね…人に、これって…失礼でしょ…」
「…そうだな、悪いな…」
「でも、まさかヒカリがお化け役とはね…」
桐崎は何故か驚くが適任だと俺は思うけどな…
すると霧島が不機嫌になった。
「青森…桐崎さんのためだったんだ…肝試し…」
「えっ…あっ…いや…」
「さっき、そうって言ってたわよ」
桐崎がドヤ顔をしている。何を考えてるんだ。
「綾瀬さんに…聞いた…案のくせに…」
「いや、それは別にいいだろ…」
「へえー…そう…」
「えっ…桐崎…顔が怖い…」
「別にっ!!それじゃあヒカリ、また後でね…」
霧島のゾーンを抜けると、どこも怖くなかった。やはり霧島には天性の驚かせ技術があるのだろう。もうすぐゴール手前のところで桐崎が
「ねえ、亀山って…」
「そのことなら心配ないぞ?…堂山先生にいっといたからさ。」
「そっか…ありがと…」
「いいって事よっ!一応、彼氏だからなっ!」
こうしてゴール直前まで来た。
よしっ!ゴール〜と思った。…その時っ!!…
「私、アンタの事…異性として好きよ…」
「えっ…」
「ゴ〜〜〜〜ッル〜〜〜ッ!!!」
委員会の人がそう叫んだ。気づくと俺たちはゴールしていた…
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