第43話 『炎の救出っ!!』
俺は肝試しの会場に急いだ。俺は肝試しじゃなくキャンプファイヤー担当だから、関係ないと思っていたが、まさかこんなことになるなんて…さっき、桐崎に連絡しても返信ないし、他の3人に聞いても部屋に戻ってないみたいだし…肝試しにいる可能性が高い。
「あっ!…おい、青森っ!!」
「えっ…」
堂山先生に呼び止められた。今はそれどころじゃないんだが…
「どうしたんですか?…」
「お前、実行委員だろ?…ってどうしたそのリュック…」
おいおいっ!今、面倒事かよ…これも実行委員の宿命なのか。
「…それで先生?何をすればいいんですか?」
………
〜肝試し〜
…アイツが言ってた場所ってここだったわね。それに寺島って誰?他の男に頼むような男は私は嫌ね…アイツは私を… 私はグッと拳を握った…すると1人の男子生徒が声をかけてきた。
「あの僕が寺島です…」
「えっ……っ!?、アンタ…」
私は自分の目を疑った。だって目の前にいるのは私と問題があった男だから。コイツは寺島なんかじゃない。
「亀山…」
私が彼の名前を言った時、彼はニヤッと笑い
「よかった桐崎さん、僕の名前覚えてくれてたんだねっ!」
「そりゃあねえっ!!…」
私が怒りを露わにすると、亀山はシッ!とポーズをとり
「ここは皆んながいるからやめよう…せっかく肝試しだから僕と組んで少し話さないかい?…」
確かに、他の男子に知り合いもいないし…しょうがないか…私は黙って頷いた。すると委員会の人がパンッと手を叩いた。
「はいっ!これから肝試しを初めていきたいと思いますっ!!」
周りの人たちの緊張感が伝わってくる。私も別の意味でコイツに緊張はしている…何を考えてるの。…青森もどういうつもりなのかしら。
「それではペアになった人から順に行ってもらいます〜お化けに取り憑かれないように〜!!」
ノリノリな委員会や初々しい男女が多い中、私たちは1番で肝試しのスタート地点に立った。
「どうなるのか色々と緊張してると思いますが楽しんでくださいねっ!!」
「えっ…あっ…はい〜」
肝試しがスタートした。夜の森は思ったよりも暗く辺りが見えにくい。…委員会の人もどこかに隠れてるのよね…コイツと2人きりじゃないわよね。しばらく謎の沈黙が続き黙って歩いた。
おかしいわね…いくら進んでも何もない。…仕掛けの1つもないの?すると亀山は遂に口を開いた。
「ねえ…あの時の事、僕は後悔してるんだよ?…」
「っ!!…はっ!?」
「もう一度僕と…」
「ふざけないでっ!!…アンタとは、もう関わらない…だからアンタは私の話、私はアンタの話をしない。そう決めたはずよっ!!だからアンタは問題になってない…忘れたの?」
亀山は…コイツは恋愛の授業で私の彼氏となった男だ。だが、コイツは歪んでいた。いきなり将来の話や結婚の話をされたり、連絡は毎分あったり、何度も家に連れ込もうとしてきたりした。コイツはどこかおかしい…
そう思って私は別れたいと言うと彼は怒り狂った。学校の先生に相談しないで彼に直接、言ってしまったのは完全に私の落ち度だった。
だが、どういう風の吹き回しか突然、彼が私のことを…私が彼の話を言わないのを条件に別れることを承諾したのだ。
それ以降、私は誰に対しても決して弱さを見せない…強い自分であると決めた。
「忘れたね…そんな約束」
「はっ!?アンタねえっ!!」
「僕はね、しばらく君を見ていた…でも君は彼氏を作ることはなかった。妙な男と一緒にいたが…」
「…青森のことね」
「そう、だが彼は綾瀬さんと付き合っている。なのに、どういう訳か他の女子とも2人で出かけている。疑問ではあった…だが僕が1番知りたかったのは君が彼と付き合っているかって事さ。彼はいい奴だったよ、僕のことも知らなかったし都合がよかった。彼のおかげで今僕たちがここにいるんだからね。」
「で?。用件は何?…」
「そんな身構えないでくれ…君は僕だけのものなんだからねっ!!」
そう言って亀山はスプレーをかけてきた。視界がぼんやり…
「キャッ!」
「無駄だよ。ここはもう肝試しのルートとは別の場所なんだからねっ!!」
「アンタってほんとっ!!」
バチバチバチッ!!
突然、変な音がした。それと同時に誰かが来た。何か光る棒?…を持って…
「ギリギリ間に合う…常識だぜ?…」
「その声…青森?…」
「あっつ!あっつ!!」
亀山が何か騒いでいる。私は視界がぼんやりしていて、ハッキリとは分からない。でも何か攻撃してくれてる?…
「亀山…随分、手の込んだ事をやってくれたな…」
「チッ!あっつ…あっつ!」
ガサガサッ!
茂みに逃げていく音が聞こえる。おそらく亀山だろう…?…私は安心からか腰が抜けた。すると隣に誰か座った。
「アンタ…青森でいいのよね…」
「そうだよ…安心しろ…」
「なんだか焦げ臭い…アンタ何したのよ…」
「花火だよ…ほら、綾瀬の持ってた…」
「アンタねえ!!…こんなとこで花火って危険でしょっ!!」
「それは分かってるんだけどさ…それくらいしか思いつかなくてよ…」
無我夢中で走ってたからな…何かあったらと思って一応リュックを持っていったらいいものが入ってたってわけだ。桐崎は、ため息をつく。
「なあ…桐崎は…」
「なんで?…アンタ、私が邪魔なんじゃないの?…」
「えっ…」
俺は固まった。確かによく揉めるが邪魔とは思ってないぞ…うん…。
「私を肝試しに行けって言ったじゃない…あれは、彼氏とか彼女とかいない人がするプログラムでしょ…」
「それは…」
俺が言いかけると桐崎は大声で
「それにっ!!…デートは中止って言っててヒカリとデートしてたり…綾瀬との勝手に交際宣言とか…亜美とのお弁当とか…私だけ除け者にされたみたいに…」
「…ごめん、配慮がなかったな…実はこの肝試しはさ、桐崎のために俺が提案したんだ…」
「えっ…」
桐崎は目を丸くした。
「ほら、前に言ってただろ?恋が分からないって…俺も分かんないんだけど、肝試しの吊り橋効果的なものがあれば、分かるのかなって…だから亀山がいなくても、お前を誘うつもりだったんだ…」
「…そっか…私のために…」
それで…どうやって戻ろう…道が分からん…
って言う雰囲気じゃないな…どうしよう…俺は1人、青ざめていた。
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