第38話 『林間学校に向けてっ!!』

ジリリリッ!!!!


「もう、朝か…」


俺は早めに起きて、しおりを見る…

学校初めての行事…皆、恋愛のことで頭がいっぱいだけど本来の林間学校の目的を忘れているような気がする。今回の林間学校は森と地球という壮大なテーマなんだが……


「和也~!起きなさいっ!!」


母さんの声が聞こえる…早すぎるだろ…俺が起きてたからよかったが…

俺は大声で叫ぶ。


「母さんっ!早く起きすぎなんだよっ!!」


ドガドガ


階段を駆け上がる音が聞こえた。


ガチャ


ドアが開き母さんが来た。前にも見たなこの光景…


「アンタはヒカリちゃん達を迎えに行きなさいっ!!」


「っ!!」


そうか…彼氏だから?…そんなこともしなきゃいけないのか…

母さんは、こういう時は真面目というか昭和というか…


「誰かおばさんだって?…」


「いや、言ってないし、思ってもないからっ!!…あと!迎えに行けって言われても、霧島たちとは、そんな約束してないから、無理ですっ!!」


「無理って…アンタねえ…」


「ほら!早く朝ごはんの準備して!!」


………


俺はあえて朝ごはんをゆっくりと食べ時間を稼いでいた。こうすれば迎えに行けと言われる心配はない。もしそんなことしたら俺は4人の家を回らなきゃいけなくなるし、それに俺は霧島の住所しか知らないし…こうして俺はゆっくりとジャムを塗っていた。


「アンタ…早く準備しろとか私に言ったくせに…遅刻なんて母さん許さないからね?…」


おっと…このままいくと母に怒られてしまう…いや、恐れてはダメだっ!!

俺は俺の意思を尊重するんだっ!!


ピンポーン


その時、俺は嫌な予感を肌で感じ取ることに成功した。

すると今、起きてきた父親があくびをしながら


「父さんが出るよ…」


と言ってインターホンに近づこうとする!

俺は机をバンッと叩きパンを食わえたまま、インターホンでは、なく玄関に直行しドアを開けた。


「うわ~!パンを食わえている人って本当にいるんだ~」


呑気なマイペース女子の綾瀬がのんびり手をふる。


「…青森…まだパジャマ…遅い…」


クールで人見知りだけど最近は心を開いてくれている女子、霧島がそう呟く…


「はあー全く、アンタらしいわね…」


毒舌で俺と衝突が多い女子、桐崎があきれる。

そういえば、なんだか久しぶりな気もする…


「桐崎っ!元気してたか?」


「ジジくさ…」


コイツ!!…桐崎は相変わらずだな。なんの変化もない…。


「センパイ…遅いっ!!」


同学年でありながら謎の後輩キャラ、三原がふてくされる。

…って言ってる場合か!!


「なんでお前らが俺の家まで来てるんだよっ!!…」


すると綾瀬が得意げに


「青森君、帰りまでが修学旅行って聞いたこと、あるでしょ~?」


「あるけど?…それがどうかしたか?…」


綾瀬はドヤ顔で


「つまり、行く道のりも、また修学旅行ってわけ~っ!」


…つまり綾瀬たちはよくわからん理論で俺の家まで来たわけか…

だがこれだけは言っておこう…


「林間学校だからっ!!」


すると俺の背後から父親の声が…


「おいっ!和也!!…そろそろ出発しないと遅刻するぞっ!!」


「ヤッベ!!…わかった~すぐ準備するっ!!…お前らは隠れておけよ…」


俺は急いで制服に着替える。うちの学校の林間学校は行きと帰りは制服なことが義務だ。…俺が急いで着替えて荷物を持って家を出ようと玄関に行くと…


「…!?」


なんと4人の女子生徒と俺の両親が仲良くお話しをしているでは、ありませんか!

嫌な予感しかしませんね…母は笑顔で俺に近づくと


「全部、聞いたからね…親に嘘なんかつけないんだよ…」


怖っ!!もはや母親じゃなくストーカーのような発言だな。

こんな事なら迎えに行けばよかった。なんで、自分の意見を尊重したんだ俺はっ!


こうして俺は朝ごはんをたいして食べずに集合場所の横浜駅に向かった。

俺たちの林間学校が始まったのだった。


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