第28話 『感謝デートっ!!』

もしかしたら人は…何年経っても何十年経っても恋バナが好きなのかもしれない…


「答えなさいっ!!美波…あなた…まさか恋をしているのっ?…」


「さあ!答えちゃいなさいっ!!美波ちゃんっ!!」


馴れ馴れしく、ちゃん付けをしてるんじゃねえ!…綾瀬は俺の背後に隠れていたが前に出て来た。頼む!余計なことは言わないでくれよ…


「なんて言うんだろ…その…好きと言うわけじゃ…」


よく言った!!…俺の母さんは「えっ!?」という顔をし、綾瀬のお母さんはホッとした顔をした。しかし!!綾瀬は、まだ話を続ける。


「でも…とても…大切な人ですっ!」


「え〜〜〜〜!!!!」


思わず俺は声をあげた。…思えば綾瀬から、こんなに好かれる理由がよく分からない。もしかして…俺達は昔どこかで会ったんじゃ…


ドンッ!


綾瀬の母さんはショックを受けたのか、玄関の扉に頭をぶつけた。すると、ずっと無言だった執事のようなお爺ちゃんが涙を流した。

えっ?…泣く要素あった?


「じい…どうしたのですか?」


「お、お嬢様にその様な人が出来て感動しているんです…奥様、今はそういう時代では、ありません。お嬢様のお好きな様に人生を歩まれるのは、どうでしょうか…」


すると綾瀬のお母さんは少しだけ目がうるみ俺の顔をジッと見た…


「……分かりました。今日は、お暇します。では和也さん、また今度…美波、今日は帰って来なさい…」


「…はい」


ん〜…なんかいい感じになってるけど実は、まだ3人と付き合ってます〜なんて言えないな。

それに本当に付き合ってるってよりは使命みたいなもんで、偽りの方が合っている気がするが…今は、そっとしておこう。


ガチャ


そう言い残すと綾瀬のお母さんは帰り執事の人は一礼をして去って行った。なんか、とんでもない親子と出会ってしまったのではないだろうか…


「よしっ!じゃあ美波ちゃん待っててね。朝ご飯の準備するから〜」


「ありがとうございます」


綾瀬は礼儀正しかった。やっぱりお嬢様なんだな…綾瀬は俺の方を見ると


「…よかった〜」


俺の方を見ながら優しく言う…安心してる?って事なのか?…まあ、そうか…学校を辞めさせられようとしてもな。


「なあ、綾瀬…」


「ん〜?」


「いや…やっぱ、なんでもない…」


聞こうとしたが、やめてしまった、綾瀬は朝食を食べた後、俺の服を着たまま帰って行った。

母さんは俺に真剣な表情で


「しっかりと向き合いなさいよ!…でも2人もいるなんてね、アンタも災難ねえ、いやアンタなら、それくらいが丁度いいのかもね…」


4人と付き合ってると今、言うべきか…どうすればいいか、だが家に来させなければ良いんだ。

…ん?そういえば、アイツ…あの時…


「何言ったんだよ!」


俺はそれだけ言って自分の部屋に入った。綾瀬に言えなかったのは、昔会った事があるのか…だが確信的な証拠がない。それに新しい容疑者も増えたからな。


………


夏休みが終わってしまった。俺は最終日に宿題を全部終わらせたので寝不足だ。俺はウトウトしながら教室に入った。


ガラッ


すると教室の生徒達がキャッキャッしている。どうやら皆んな夏を楽しんだのだろう。俺も多少、忙しかったが、まあ楽しかったからな…


ガラッ


教室に太田が入ってきた。太田は日焼けしていてサングラスをかけていた。お前この夏に一体何が…


「どうした…お前」


「色黒の漢らしい男になれば、いいって思ったんだよ!」


「それは彼女が言ったのか?」


「いやっ!自己判断だ!」


俺は太田の肩に手を置き


「そうか…強く生きろよ…」


「??どう言う意味だ?」


そんな太田を無視して俺は席に着いた。その後の記憶は基本的に寝ているだけだった気がする。あまり記憶がないな…そのまま放課後にあなってしまった。


「ふあ〜〜」


「いい眠りでしたか?センパイ?」


「!!」


その声で途端に目が覚めた。どんな目覚まし時計よりも体に悪いな…


「なんのようだよ…三原…」


「なんですかっ!その感じ…今日は私の日ですよ…」


「あれ?…そうだったけ…」


「センパイずっと寝てるから放課後までソッとしといてあげようとした私の優しさに感謝してくださいよね!」  


「分かったよ…サッサと行くぞ!」


教室で話しているとチラチラ見られるからな…三原は今モテてるらしいからな。


「なあ、前島がどうなったのか…聞いてもいいか?」


「そうですね…あれから少し苦労したみたいですよ…でも少しずつ良くなっていっているみたいです…でも」


「でも?」


三原はムッとして俺の顔を指差し


「前島にセンパイがあんな事言ったから前島はあの後、彼女と別れてずっと私に告白してくるんですけど…」


「あんな事?…俺が三原に相談されてるって事だろ?それの何に問題が?」


「前島は、これで相談する事は無くなったからセンパイと話すのはやめろって…それに美波さんと付き合ってるなら彼女待ちだし、やめろって…全くどの口が言うんだか…」


「なんほど…それはそれで新しい問題が生まれたってわけか…」


「まあ、それでも前よりは100倍マシですけど…」


「三原…」


「だから今日は感謝デートさせてくださいっ!

夏休みは用があって、なかなか会えなかったですし!」


感謝デートか…だったら今日は解散して明日にしてもらいたいものだ。俺、今日は眠いから…

なんて言えないな…


「センパイ?…何が言いたいか分かっちゃうんで、その顔は控えた方がいいですよっ♡…?」


静かな圧が俺の睡魔を潰した!!…




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る