第26話 『証拠隠滅っ!!』

「はあああああああっ!?」


暗いリビングに声が響き渡る…

だが綾瀬は突然の俺の叫びに、びくともしない…それはそれで怖いんだが。


「綾瀬…どういう意味だ?」


「どういう意味って…そのままの意味だけど…」


「俺の事が好きなのか?」


「ん〜〜…嫌いじゃないよ?」


嫌いじゃないって…どういう意味なんだ?

好きとは言ってない…複雑な意味って事か?


「……私ばっかり抜け駆けは良くないからね…」


ボソッと綾瀬が何か呟く。声が小さくよく分からなかった。


「えっ?…なんて?」


「…どうなのか?…返事は…」


「いや…俺は運命の人と付き合うんだ…その人を見つける為に頑張ってるから…っ!」


まあ最近は色々有りすぎて何もしていない気はするが…結局、返信も返ってこなかったしな…

だが、そういえば綾瀬は見つけて欲しいと山田花子の真意を見抜いていた…なぜだ?…女の勘ってやつか?


「あ〜あ…振られちゃった…」


そう言って綾瀬はゴロンと俺に背中を向けた。

そして顔だけ俺の方を向き…


「これで寝込んじゃったら、青森君のせいだ〜っ!!」


「寝込んじゃうって言ってる時点で大丈夫だろ?…」


「ふんっ!」


プルルルルルルッ!!


急に携帯が鳴り出した。えっ…俺の?

いや…やっぱり綾瀬のだ。…嫌な予感…


「も…もしもし…」


出るのかよっ!!狸寝入りを使えよっ!

こんな真夜中…


「えっ?…友達の家だけど?…うんうん…でも…私、分かってくれるまで帰らないからっ!」


何を話しているか分からないが、とんでもない言葉が聞こえたぞ?…帰らない!?そんな勝手な事を…


「もういいっ!」


そう言って綾瀬は電話を切った。何やら少し怒っている。


「…ど、どうだったんだ?」


「親が本当に友達か?…とか学校は辞めさせるとか言ってきたの!」


そりゃあ…いきなり友達の家に泊まるって聞いたら心配するだろう…俺の顔も見られたし…


「私さ…いつもいつも誰かに決められた事しかやってこなかったの…どうして、やらなきゃいけないのか理由は聞かずに…いや…疑問にも思わなかったの…」


そしてチラッと俺の方を見る…


「?」


「…みに会うまではね…」


「えっ?なんて!?」


1番気に、なるところで綾瀬は、また声のボリュームを下げ小声で言う…それを聞き取れない俺。…おかしいな、耳くそでも詰まってるのかな…


「教えない〜」


綾瀬はニヒヒと笑った。まあ今は良しとするか…俺も疲れたし寝よ〜…。だが、今は良しとしちゃいけなかった!!タイムリープ物なら俺は、この時間に、きて未来を変えているだろう…


〜朝〜


「ふあーーっ…」


…朝か、あれ?なんで俺リビングで寝てるんだっけ…寝ぼけている俺が隣を見ると


「っ!!」


そこには、だらしない格好の俺には刺激が強すぎる美女が隣にっ!!


「あっ!…綾瀬!?」


そうだっ!!俺…昨日っ…蘇る記憶っ!!


「あれ〜?…なんで青森君が〜?…」


お前も寝ぼけてんのかいっ!!


「いや、ここ俺の家だから…綾瀬がいる方が、なんでだからっ!!」


「もう〜朝から元気だな〜」


綾瀬はゴロンと悠長に2度寝を始めようとした。

どんだけマイペースなんだよっ!!


ガチャ


「えっ?…」


突然、玄関のドアの鍵が回った。…泥棒か?

だが、こんなこともあろうかと


ガチャ!ガチャ!!


鉄壁〜ドアチェーン〜!!


「ちょっと〜!!なんでドアチェーンしてんの?」


母さんっ!?どうして??朝早くない?…って

もう昼かよ!?夏の遅起きがこんな所で足を引っ張るとは…っ!!


「いやー心配だったもんで…」


綾瀬を見ると焦りもせずに呑気に2度寝を始めた。


「待て待て待て待て!!!…寝るな!寝るな!」


「どうしたの〜?」


のんびりとしている。だがバレたら、まずいぞ…もうすでに霧島に会ってるからな、会っていなければ手の打ちようは、あったんだが…


「隠れろ!とりあえず俺の部屋だ!!」


俺は綾瀬を引っ張り、布団とかも全部俺の部屋にいれ鍵をかけた。


「ごめん、ごめん」


俺は急いでチェーンを開けた…ん!!靴っ!!

前の失敗は靴だった!!俺は無言でチェーンをした。


「どうしたのよ、チェーンなんて…って、開かないじゃない!ちょっと和哉!?」


少しだけ開いたドアから母さんの顔が見える。

ひえー!!俺は急いで靴を俺の部屋に入れ鍵をかけた。


「いや〜1人だったから部屋が散らかっててさ…」


そう言って俺はチェーンを、はずした。

すると母さんは怒って!!…いなく、ニヤニヤしながら家に入った。キモ…


「アンタ…」


母さんのニヤニヤが突然、変わり深刻そうな、いや、どっちかっていうと俺に引いている顔だ。


「?」


「浮気…?」


「え!?…な、なんの事?」


「匂いよっ!!」


「へっ?…に、匂い?」


「最初はヒカリちゃんが来てるのかと思ったけど…この匂い、ヒカリちゃんじゃないわ!」


うわー!見事な名推理!!…


「え…ちょっ!…母さん!!」


母さんはダンッダンッと階段を上り、俺の部屋のドアを確認せず指を差し…


「開けなさい」


「…はい」


ガチャ


すると、なんという事でしょう!俺の部屋には布団と靴…そして俺のベッドで俺のシャツを着ている無防備な美少女がいるでは、ありませんか〜!!

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