第25話 『夜のお誘いっ!!』

「ふっふっふ〜ん〜♪お邪魔しま〜す〜」 


綾瀬は全然緊張していないようだ…

どういう感性してんだよ。


「あ、綾瀬やっぱり…」


「夜ご飯は、お祭りで買ってたから安心して〜」 


「それは、もう冷めてるんじゃ…」


「レンジがあれば大丈夫だもん〜」


綾瀬は帰れと言おうとすると何かしら理由をつけて誤魔化す…今日は両親は爺ちゃんの祭りの片付けで家にいない…つまり…今日は思春期の男女が1つ屋根の下…

だが…アイツは…「彼氏の家に行くんだもん…ある程度は覚悟してるっ!」そう言いやがった!…本当にどういうつもりなんだ…


「じゃあ先にシャワー浴びてくるね〜」


「ふぁっ??」


「先にご飯の準備しといて〜」

 

「ったく…ワガママプリンセスだぜ…」 


そんな事を言いつつ俺は祭りの焼きそば、たこ焼きを温めていた。そういえば冷凍食品もあったような…


「あのっ!青森君っ!!」


お風呂場から綾瀬の声が聞こえた。


「えっ!!もう出たの!?」


「いや…ち、違くて…その〜服を忘れちゃって貸してくれない?下着は持ってるんだけど…」


どうやら最初から家出する気で下着は新しいのを持ってきていたらしい。だったら服も持ってこいよ…


「分かった…ちょっと待っててくれ」


このシャツとズボンでいいかな…無難な白のシャツにしよう。


「長ズボンと半ズボン…半ズボンを渡すと変態に思われないだろうか…だが夏だしな…」


よしっ!両方持っていこう!!

俺は洗面所のドアを叩いた。


トントン


「は〜い〜!」


「入るぞー」


ガチャ


このドアの向こうに裸の女子が…何故こうなるんだ…親がいたら絶対、俺、生きていないだろうな…


ガチャ


「えっ…」


突然お風呂場のドアが開いた。そしてひょっこり綾瀬が顔を出す…おい待て!本当に生きて帰れなくなるっ!!俺は急いで後ろを向いた。


「なっ!何してんだっ!!」


「え〜?と…お礼??……ありがと〜」


「お前な…っ!!」


俺はそのままドアを閉めた。


「はあーー…」


服を届けただけでこんなに疲れるとは…

いかんいかん、よし!先に食べちゃおう!!

あっ!この焼きそば上手いっ!!

バクバク俺が食べていると…


ガチャ


「ああ〜!!1人で食べないで〜!!」


「グッ!!エホッエホッ!」


俺は喉を詰まらせた…そこにいる女子は俺のシャツが大きいようだ。そして半ズボンを履いている…


「わ、わりぃ!…似合ってるぞ!綾瀬っ」


「似合ってるって…こういう服に言う事なの?」


「そ…そうだな」


俺とした事が少し焦っちまったぜ…

風呂でも入って心を落ち着けよ。


「じゃあ俺が次、入るぞ…」


「ごゆっくり〜」


「いや、俺の家だから!」


ガチャ


俺が風呂に入ろうとしたが…あっ!シャワーだった。


〜〜〜


ガチャ


俺が風呂から出てドアを開けると、そこには空の容器だけでムシャムシャと食べる綾瀬の姿。


「あっ!普通に食べちゃった…」


「大丈夫、こんな事もあろうかと冷凍食品が…」


あっ!それも食べられたってことか…仕方ないな。


「ちょっとコンビニで夜食、買ってくるわ…」


「ごめんね〜…私も行く〜!」


「いや!流石にその格好じゃ…」


「大丈夫だよ〜離れなきゃ〜」


そう言って俺の腕にしがみつく…くっ…アザトい!やっぱり三原よりアザトい!!

夏の夜は暑く、明るい場所には虫が飛んでいる。いつもの夏の夜なのに…いつもじゃないんだよな…綾瀬はルンルンだ。ったく人の気も知らないで…

こうしてコンビニに着いた俺達はコンビニで弁当やアイスを買って帰った。


そしてコンビニの飯を食べながら俺は綾瀬に詳しく聞く事にした。


「なあ綾瀬…本当に大丈夫なのか?こんな事して…」


「いやだって言ったのにさ…お父さんもお母さんも賛成してくれないんだ。過保護ってやつなんだよっ!」


「そうか?…そういう意見もあると思うぞ?いきなり共学に、なったり彼氏作らなきゃいけなくなったりさ…」


「でも!私は楽しいのっ!今日の祭りも本当は行っちゃダメって言うのを無視して無理やり来たんだもんっ!!」


そういうことか…


「でもなあ…流石に親が心配するだろ…」


「いつも必要以上に過保護なんだよ…」


「…例えば?」


「料理は美波の指に傷ができるかもしれないからダメだって…」


「おぉ…それは…確かに過保護だな…」


「だから今回が私の初めての反抗なのだ〜!!」


もしこれで警察の人が探してたりしたら…

冗談じゃ、すまされないくらいの大問題なんじゃないか?

俺の心配してる顔が伝わったのか綾瀬は俺の頭をヨシヨシと撫でながら


「大丈夫だよ〜ちゃんと友達の家に泊まるって嘘をついたからっ!!」


「どこで安心しろとっ!?」


「でもさ…」


「?」


俺の頭を優しく撫で微笑みながら


「やっぱり私を助けてくれたっ!!」


「た、助けてないだろ…俺は泊まれる宿を提供しただけだ…」


「それを助けてくれたって言うんだよ〜」


「ほらっ!!もう寝るぞ!!」


「うん!」


歯磨きをして(もちろん綾瀬には新品の歯ブラシを渡した。)綾瀬には母さんの部屋でいいかと思ったが母さんにもプライベートがあるわけだし…仕方ない。


「俺のベッドを使っていいから」


俺はリビングに布団をひいて寝る事にした。

俺が布団をひいていると綾瀬がもう一つの布団を持ってリビングに来た。


「えっ?綾瀬…なんで布団??」


「せっかく、お泊まりなのに1人なんて…お泊まりらしくない〜!」


「え…全く…好きにしろよ…」


ここで何を言っても綾瀬は一歩も引かないだろうからな…


「は〜いっ!」


〜〜パチンッ〜〜


電気を消した…暗い部屋で布団は隣り合わせ…今になって緊張してきた…


「少しお話しよう?」


「いいぞ…」


「私と正式に付き合ってみる?」


「はっ!?…」


暗闇の中でも目が慣れてきたのかハッキリと綾瀬の顔が見えたのだった…

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