第23話 『家庭の事情っ!!』

ドンドン


太鼓の音が響く…提灯に明かりが、つき祭りが始まった事を実感する。ここの祭りでの俺のミッションは家族にバレない事…そして学校の奴らにも見つからない事である。…なのに…そんな事お構いなしに彼女らは祭りを楽しんでいる。えっ…一緒に行動するの?


「おいっ!お前ら…プールの時みたいに一人一人に…」


すると三原が俺の耳元で


「何言ってるんですか?センパイ…プールの時みたいに待てる場所なんてないですよ?祭りはどんどん混んでくるんですから…」


「え…あ、ああ…確かにな」


全く…この子はなんてアザトいんだ…俺の反応を見て三原も流石に気付いたようだ。


「青森は…不意打ちに弱い…」


霧島が追い討ちをかける。いや!俺は追い討ちに弱くない…とも言えないのかもしれない…


「まったくーセンパイは〜♡」


「ほ…ほらっ!わたあめ食べようぜ!わたあめっ!!」


「誤魔化しちゃって、バカみたい」


桐崎が呆れながら言う。男子なんて大抵そうなんだよっ!!


「あれ食べてみたい〜!1000円パン?なんか面白そ〜」


「えっ…じゃあ…私達は金魚すくいでも…」


霧島も流石にあそこに行くのはまずいと思ったようだ。綾瀬と桐崎は1000円パンの方に行っている間に俺たちは金魚をすくいに行った。三原が思わぬ力を発揮した。沢山の金魚を取ったのである。霧島はそこまで取れていなかったが心ここにあらずという感じで右の屋台を見ていた。


「どうした?」


見ると最新のゲーム機が当たる?…くじがあった。


「あーいうのはな絶対当たらないから安心しろ」


「まあ…分かってはいるけど…」


すると、どんどん人が増えてきて、どんどん混んでいく…三原が言っていた通り途中からの合流は不可能になりつつあった。


「皆んな〜大丈夫〜?」


綾瀬がそう読びながらグングンと先に行ってしまう…言葉と行動があってねぇーぞ!!

…やっとの思いで俺達は桐崎との合流に成功した。


「あれ?亜美さんは?」


「それが途中ではぐれちゃって…呼んだけど返事もないし…」


「あっ!…あそこ…」


「どこ行くんだ…アイツ…」


思えばいつも綾瀬はマイペースだったな…

だが意外と計算できる性格だと俺は知っている。つまり…


「悪い…皆んな先、行っててくれ」


「わかった…そのかわり…」



〜〜〜〜


綾瀬が人混みに紛れて裏へ行き、道に抜け出した。

俺は、すぐに後を追った。すると綾瀬は車に乗ろうとしていた。


「綾瀬っ!!どういう事だ?」


綾瀬は驚いた表情をしつつ運転手に何かを言うと車は綾瀬をおいて行ってしまった。

綾瀬は俺の方に来て


「あはは……見られちゃったね…」


「綾瀬…どうしたんだよ?」


綾瀬は意を決して俺に打ち明けてくれた。


「私さ…学校、辞めさせられるかもしれない…」


「え…」


「両親がね…恋愛の授業に納得いってなくてさ…」


「!!…」


まあ…そうだよな…急に共学になって恋愛の授業が急に追加されたら、そういう親もでてくるよな…


「でもさ…私は辞めたくないんだ…」


「そ…そうなのか?」


「うん…私、今の学校生活、結構好きなんだ〜…」


……そんなに楽しいものだったか?大変だった記憶がほとんどだが…きっとこれからも…

でも綾瀬の顔を見るに本当に楽しかったのだろう…


「綾瀬…どうするんだ…」


「私、家出を考えてるっ!」


「はっ?」


思いがけない解決方に俺は困惑した。流石に16歳の女子が家出なんて…


「おい、それは考えなおせよ……」


「…もし何かあったら、その時は私を助けてね…」


「えっ…まあ俺ができる事なら…」


「多分、不可能だけどね〜」


「えっ!?…だったら無理だろ…」


「それでも助けてくれるよ、君は…いつも…」


いつも?…どう言う意味だ?


「綾瀬…どういう…」


「さあて!皆んな心配しちゃうよ!早く合流しよう〜」


その場を上手く濁された気がした…綾瀬の両親の説得…無理だろ…どう考えても両親が正しいように感じてしまうのだが…

でも綾瀬の、あの表情を見ちまうとな…


「って…俺も合流しなきゃっ!」


俺は人混み押されまくりながら、霧島に電話をして皆んなと合流できた。皆んな焼きそばやカステラなどを買っている。


「全く、何やってるのよっ!」


「本当ですよ、センパイより美波さんの方が早く合流できちゃいましたし…」


霧島はなんとなく俺の表情を感じとったのか俺の顔を覗き込んで


「…なんかあった?…」  


「えっ!…いや…それより約束の場所に行こう!」


「約束〜?」


綾瀬は不思議そうに聞いてきた。


「ああ!行けば分かるさ!」


「提案したのはヒカリだからっ!」


そう言って俺達は屋台の先を目指した。





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