第22話 『夏祭りっ!!』

長〜い夏休みはゴロゴロしていたらあっという間に最終週になってしまった。長〜いようで短い夏だったな…俺は山田花子のアカウントを見る。実は山田花子からの返信は、いまだにない。夏休み2日目に送ったのに…

それに今日は、あの日なのだ…


ドタドタ


階段を勢いよく登ってくる音が聞こえる。

ほら…来た。部屋に鍵でも…


ガチャ!


いつも通り俺の部屋にノックをせずにドアが開く。


「和也っ!!夏祭りの準備よ!早くしなさい!」


はあーなんで俺が…って母さんが着物を片手に持っていた。えっ…まさか俺の!?


「母さん…もしかして…それは…」


「そう着物よ?あんたが着るようの!!」


「なんで…」


「そりゃあ…ねえ!?〜」


なんでだかは知らんが母さんはニヤニヤしている。また良からぬ事でも考えているんだろう…

長年の経験から俺は抵抗するのをやめ素直に着物を着た。


「あら、馬子にも衣装って感じね〜」


「おい!褒めてないだろっ!!」


まだ明るい空、暑い気温、そして久しぶりの…祭り!!…の準備…大勢の人が屋台を作っている。えっと…あっ!!


「爺ちゃーんー!!」


「お?…おうっ!!和也!久しぶりっ!!」


頭にハチマキを着けた陽気なお爺ちゃんが俺の爺ちゃん。青山あきらで、ある。


「あれ?爺ちゃん今回の屋台…」


俺は屋台を組み立てながら看板を見た。

すると爺ちゃんは得意げに


「これは1000円パンだ!!」


「は?」


「10円パンが流行ったろ?それを改良しただ!」


長方形の形のどら焼きみたい…それに1000円ってチョコペンで書く…らしい…爺ちゃんはミーハーでパクリ癖がある…


「それより和也…お前、彼女ができたんだって?」


「えっ?…」


母さん…余計な事を言いやがって…


「いいか?和也、俺の時代は恋愛に授業も何もなかった…だがそうした結果、少子高齢化が進んじまった…だから、せっかくの機会だ!付き合ってる子と真剣に向き合えよ?」


「…うん」


付き合ってる人、実は4人なんです…なんて言えないよな…爺ちゃんの真剣な表情が……

その後はせっせっと準備をしていた。辺りは、すっかり祭りらしくなっていった。久しぶりの祭り…まあ楽しみではあるな…準備から1時間くらいたった…すると


「あ…青森…」


俺の背後から声が聞こえた。振り返ると、やはり…来たか…


「ひ…久しぶり…」


霧島も浴衣衣装を着ていた。なるほどな…母さんが俺に着させた訳はこれか…


「おう!プール以来だな!」


あのプール以降、各々、両親の実家に帰ったらしい。ただ俺はバイトをして金を貯めていたのだ。そんなこんなで会うのは、なんと初日ぶりなのである…


「へえー!このべっぴんさんが和也の彼女かい?」


どう答えるべきか…なんかウチの家族が霧島が彼女で固定されている気もする。だがここで違

うは……


「…そうです…霧島ヒカリ…いつも…青も…いつも和也君にはお世話になっています…」


霧島はそう言ってお辞儀をした。着物も相まって、なんか、お見合いみたいになってるから!

爺ちゃんも、うんうんと頷き俺の背中をバシバシと叩いき


「和也!大切にしろよ!!」


なんか彼女にしては重くねえ?……霧島は少し赤面し


「わっ!…私も手伝いにきたっ!!…」


すると爺ちゃんはピコンと、よからぬ事を考えている顔になった。


「和也!やっぱり手伝いはしなくていいっ!まあまだ始まるまで30分くらいあるけどなっ!…ほらっ!」


そう言って爺ちゃんはパクリの…いや渾身の1000円パンを俺たちにくれた。


俺たちは夏祭りが始まるまでの間ベンチに座りパンを食べながら待っていた。…霧島が山田花子の可能性あるよな…実は俺は霧島についてある疑問があったのだ。だがそれを言うのはまだな気もする…いや山田花子だったらそもそも祭りには来ないか?…そんな事を考えているといつの間にかジーっと霧島の顔を見ていたようで


「ちょっ…青森…見過ぎっ!!」


「え…あっ!…ああ…すまん!」



いかんいかん、俺としたことが…すると霧島は口を開いた。


「青森は…この夏…どうだった?…」


「この夏か…」


そう言えば初日以外は太田と会ったりしたぐらいだったな…でも…


「楽しかった…かもな…」


霧島は意外そうな顔をした後すぐに笑いながら


「素直じゃない…」


「う、うるせー!」


こんな風にダラダラと時間が過ぎていくのも良いのかもな…俺はすっかり4人の事…


「あら?ヒカリに青森じゃない…」


「え?」


振り向くと桐崎、三原、綾瀬の3人がいた。しかも3人共、着物姿で…


「どうして?」


「どうしてって…こっちのセリフですよ!センパイにもヒカリさんにも連絡したのに…っ!!」


そう言って三原の顔が膨れる。

綾瀬はアラアラ〜というおばさんのような雰囲気で


「あら〜??私たち、お邪魔だったかしら〜?」


霧島はスマホを取り出す。


「全然…気づかなかった…」


えっ!ちょっと待てっ!つまり夏祭りは家族にバレないようにコイツらとデートする流れに…それだけは避けなければ


「奇遇だな!悪いな今日は無理だけどまた今度、学校で…」


すると俺の肩はガシッと、捕まれ


「待ってくださいよ〜セ・ン・パ・イ・?」


「じょ…冗談です…」


やっぱり、こうなるんだな…




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