第16話 『休みの前に勉強ですっ!!』

期末テスト…それは夏休みという楽園に行くためには避けては通れない道…でも俺は大丈夫だろ!今までも赤点は取らない程度には勉強しているしい。この前の中間テストも、そうだったからな。安心だ…なのに俺は何故か職員室に呼び出されていたのだった。


ガラッ


「失礼しまーすー…」


「青森さんテスト勉強は順調ですか?」


「えっ?…別に普通に…ぼちぼち?…やってますよ?」


まだしてない…まだしてないだけだ。今日の夜からやろうかなと…


「やってないんですか…」


「いやいや!赤点は取らないんで!」


この学園では期末で赤点を取ると夏休みに補習があり楽しい夏休みは送れないのだ…


「安心してくださいっ!取りませんよっ!」


俺がドヤ顔を決めると先生は1つの紙切れを俺に渡した。


「こ…これはっ!!」


嘘だろ…こんな事って…


「分かっているな?赤点を取ったら夏休みは、ない…だがそうなると夏のカップルの課題ができない。だから…ね?」


「わかりました…」


〜〜図書室〜〜


「ちょっと?何の用よ?今日のデートは亜美のはずでしょ?」


桐崎の教室に待機しホームルームが終わったと同時に強引に連れてきたのだ。


「はー、そんな偉そうな事、言ってらんないぞ?お前なあ…」


俺はそう言って桐崎にさっき先生から貰った紙切れを机に置いた。


「ちょっ…これっ!!なんで…あんた!!」


流石の桐崎も方が真っ赤だ。それもそのはず!なんてったって、この紙切れは…


「桐崎…この間の中間テスト数学15点、物理13点、科学24点…理系が苦手なんだな…」


「ちょっ!!プライバシーの侵害よ!許される事じゃないわっ!」


「俺は先生にお前の勉強を見るよう言われたんだ」


「そういうあんたは?点数よかったのかしらっ!?」


「俺か?…俺は全教科60点だ!」


「…なんかリアクションに困るわね」


「うるせー!点数15の…グッ!」


桐崎は俺の足を静かに…でも思いっきり踏んだ!!バカのくせに…


「ガッ!!」


「な・に・か?」


コイツ…心の中を読めるのかよ。


「図書室ではお静かに!」


「「は…はい」」


図書委員の人に怒られてしまった。流石の桐崎も図書室では大人しくする…と思ったが大人しく俺に反抗してきやがる!


「別に大丈夫よ…赤点を取らなきゃいいのよね?私も今は勉強してるし」


「いや…流石に信用できねえよ…証明してくれたら話は別だがな!」


「しょ、照明?」


そう言って桐崎は図書室の照明を指さす。


「違う!!証明だっ!!」


俺はそう言ってドンッ!!……ではなく静かにソッと紙を渡した。


「これは?…ゲッ!」


「そう…先生に渡された理系試験対策プリントだ。これをやって赤点ラインの35点より上なら俺は勉強を教えるつもりはない!」


「っ!分かったわよ…やるわよ!」



〜〜30分後〜〜


「お前…勉強してたのか?」


「数学5点、物理9点、科学8点……中間より下がってんじゃねぇーか!!!」


「図書室ではお静かにっ!!」


「………下がってるぞ……赤点取らないようにするんじゃ…」


「誰が理系の勉強をしてるって言ったの?誰が理系は赤点取らないようにするって言ったの?」


桐崎は開き直り堂々と言った。


「お前は一休さんかよ…まあ、という訳でこれから毎日俺が赤点回避できるくらいには教えてやるから」


「ま…毎日!?そしたらあんたデートは?」


「もう予定がコロコロ変わる事くらい、よくあることだから…霧島と三原は連絡できるとして…」


そう俺は何気なく口にしていたが桐崎は、え?と何か引っかかったようで…


「あんた…いつから2人の連絡先…」


「え?…聞かれたから交換して…」


「ふ…ふ〜ん…」


そう言うと桐崎はポケットからスマホを取り出した。ったく、そんな所にいれてるといつか落とすぞ?…


「あんたのアドレス…教えなさいよ…」


桐崎は少し赤面しながら言う…

えっ…コイツ俺の事、好きなのか?嫌いなのか…どっちか分からなくなってきた。だが持ってて損はないだろう。…待てよ??俺は取り出そうとしていたスマホを戻した。


「?」


「期末テストで1つも赤点を取らなかったら教えてやろう!!」


「…っ!!」


こうすれば…多分やってくれる?はずだ…だったらいらないとか言われたらどうしよう。

俺は多少の不安を抱いたが…


「分かったわよ…やればいいんでしょ!やればっ!!」


「ああ!その通りだっ!!」


すると俺の背後から肩をぽんっと女子高生が…


「青森君??何回注意したら分かってくれるのかな?」


「えっ?!綾瀬…」


綾瀬が図書委員…なんか似合うけども、さっきから注意してたのは綾瀬だったのか、ずっと後ろから声だけしか聞こえなかったから気づかなかった。


「それと私とは無条件で交換してくれるよね?そうだよね〜??」


いつもの言い方なのに雰囲気が…何か危険を感じるような…


「は…はい」


こうして俺は今日、1人の女の子と連絡先を交換して、もう1人の子と勉強会をする事を約束したのだった。

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