第9話 『ツンデレっ!!』

〜その夜〜


俺はその時思った。…山田花子からの返信がないのも写真だけなのも、もうすでに再会している可能性が高い。って事は間違いなくあの4人の中にいると考えていい。

霧島か?…いやあんなクールで無表情ではなかった。

綾瀬か?…いや、おっとりとしてて優しくて…だがあの子はおっとりしてたから?違う気がする…

三原か?…いや、そんな浮気なんかするようなタイプではないぞ…

桐崎か?…いやあんな高圧的な態度

…まさか!?あえて!!!


〜翌日〜


俺は今回は放課後になるまで待つことにした。

警戒されないためにな。

しかしこうして教室を見回すとすごいな…ラブラブが溢れてるぜ。そこにラブラブとは無縁のような不のオーラをまとった人間が入ってきた。


「どうした?太田…」


「聞いてくれよ…俺さ、実は彼女と上手くいってないんだ。」


「えっ…知ってるけど」


「え?」


「ん?」 


変な間が生まれたが太田は無視して話を続けた。


「俺、彼女ができた当初は少しずつだけど仲良くなってたんだけど…俺が一生守るって言ったら蛙化だって。ただそれだけの事で…」


蛙化現象…相手の些細なことで恋が冷めてしまうこと。


「まあ…高校の恋愛なんてそんなもんだろ?」


「小学校の頃を引きずって2人の子とデートしてるようなヤツが言ってんじゃねえ!」


本当は4人なんて言えないな…


「なあ?そこで相談があるんだ…和也」


「は?」


〜放課後〜


俺は桐崎の教室に行かず何故か遠方から太田達をサポートしていた。

なんで俺がこんな事を…太田は今日のデートを見てどこがダメかアドバイスをくれと言うが…見た感じ彼女は冷めてるし…修復は…無理かな

…って


「イタタタタッ!!」


強烈!!耳が引っ張られた。見るとそこには赤髪にツインテールでムスッとした横暴なあの女がいた。


「桐崎!?なんでここに…」


「今日はデートでしょ?だから来てあげたんじゃない!!」


お前さてはツンデレだな。だがもしかしたらコイツが1番有力な気がするんだよな…俺の運命の…


「じゃあスイパラにでも行きましょうか」


「えっ!?俺の意見は…」


「あんたの意見なんてなし…私の思うがままにね〜」


やっぱりないな。コイツ…うん。コイツはないな…

俺はそう確信しながらスイパラに行った。

桐崎は細身のわりに沢山食べる食べる…

乙女とか聞いてたから、そういうのは気にすると思っていたが…


「あんまり食べると太…」


そう何気なく言おうとした時、足が勢いよく凹む…


「ガッ!!」


「あんた何言うつもり?」


うわ…外だから笑顔だけどその笑顔から隠しきれない威圧感が…


「気になったんだけどさ、お前、そんな感じだったら誰からも好かれないぞ?」 


桐崎は黙って俺を見た。少しの沈黙とともに桐崎は珍しく普通に答えてくれた。


「分からないのよ…何も…」


「?」


「好きってなんなのか…付き合うってなんなのか…憧れるけど分からないのよ…何も…」


俺はその顔をどこか切なく、悲しい表情だと感じた。桐崎でもこんな顔するんだな…


「でもよ…」


俺が言いかけた時桐崎はバッと席を立ち


「ケーキでも取ってくるわ…」


そう言い残しせっせと歩いて行った。あれが桐崎の本音…なんで言う気になったかは謎だが…でもそしたら俺も本音で喋らなきゃな…

山田花子の事を…

すると桐崎が戻って来た。大量のケーキやパフェを持って…さっきのシリアスさはいずこ…


「なあ桐崎…聞いてほしい話があるんだ」


そう言って俺は山田花子の事を喋った。


「…ってわけで俺はその子と付き合いたいんだ。」


「へぇ〜!!あんたにしてはいい話じゃない!」


桐崎はやはりそういう話は好きみたいだ。

…だがコイツが運命の子なのかは不明だ

安易に聞くとコイツの場合…警戒される気もするしな…


「でもデートの時に他の女の話をする男は0点だけどね」


「はぁ?!!」


おいおい!!そりゃあねぇだろ!!俺がせっかく本音を!!やっぱりコイツは違うな!!

俺はそう心の中で確信したのだった。

…あっ…!!…太田…まあいいかアイツも俺の秘密、先生にチクッたし…先生…


〜次の日の職員室〜


ガラガラッ


俺は職員室に来た。どうしても先生に聞きたい事があったからだ。


「あら、どうしたんですか?青森さん」


「特別試験の事で少し、聞いてもいいですか?」


「はい、なんでしょう…」


「彼女達と接して俺は最終的に何を目指すんでか?」


聞かされていたのは彼女達と付き合う事のみ…俺がいろんな女性と付き合って何を目指しているんだ…

すると先生は普通に


「そんなの彼女を作るのに決まっているでしょ?」


「は?どういう意味で…」


俺が最後まで言う前に先生は答えた。…なんかよく話を遮られるな俺。


「4人と付き合い最終的には1人選べばいいんです。」


「彼女達の意志はどうなるんですか?」


「彼女達に好かれる人になれば簡単な事です。」


「えっ…いやでも」


「青森さん…今の時代、日本は愛という言葉を忘れ独りになりがちなんです。出会いもなければそれこそ運命なんてもっとありません。しかしこのままでは少子高齢化は進む一方です。なので高校生の間だけは彼女を作る、異性と関わってみる事を忘れないでください。」


「じゃ…じゃあ他の3人は?」


「心配は無用ですよ、多分その時がきても彼女達は強く成長している事でしょう…」


「?」


何を言っているのかは分からないが多分…未来の俺なら分かるのだろう…


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