第6話 『例え…なれなくてもっ!!』

その女性は俺と同じ高校の制服だがリボンは青…どうやら高二だ。そして霧島と面識があるらしいが…


「ごめんなさい、せっかくデート中だったのに…」


謝られた…どうやら悪い人って訳ではなさそうだけど…ん??あっ!!この人!!


「あなたは確か霧島のお姉さん!!」


「はい…月ノ下で生徒会長をしていた霧島玲那です。」


霧島がなぜか話すなと言っていた例のお姉さん…そりゃあ逃げる訳だ…でも優しそうだけどな。


「あの、あなたのお名前は?」


「あっ!俺は青森和也っていいます…」 


「やっぱり!!あなたが青森さんなのね!!」


「やっぱり?」


「…あの誰とも心を開こうとしなかった妹が授業とはいえカップルになった方ですよね」


「いや…そんなすごい事でもないですよ。俺と霧島は結局は余りで組んだだけですし…今日デートしたのも赤点回避のためだけですし…」


すると霧島の姉さん…玲那さんは俺の隣に座り俺の目をまっすぐ見て


「それがすごい事なんですよ!例え赤点になるとしても普段ならデートなんかしないんですから…」


そ…そうなのか?だったら霧島はなんで…まさか!霧島は俺の運命の…ってそんな事、考える前に


「1つだけ聞かせてください。霧島に…」


よく考えるとお姉さんも霧島か…


「ヒカリに何があったんですか!?」


するとお姉さんは少しだけ考えて俺の方を見た。


「あなたになら…ヒカリはね…」


〜翌日〜


…嫌な夢を見た。多分昨日姉さんに会ったからだろう。いや…それも言い訳…結局私は姉さんみたいにはなれない。

青森にも悪い事しちゃった…ローテーション的に私が今度青森と会うのは4日後…その時に謝ろう…

部屋を出るとお父さんもお母さんも仕事で朝早くから家を出ていた。姉さんもいつも私に気を使って早く家を出てくれている…なんで私ってこうなんだろう…すると自然と涙が溢れ出してきた…


ピンポーン!!ピンポーン!!


「ん?」


誰だろう…こんな朝早く…いいや無視しよう…顔洗ってこなきゃ…


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


あー!!うるさい!…私は仕方なくインターホンを見た。すると!!


「えっ…嘘…」


私は思わず扉を開けてしまった…


「よっ!!おはよう!!霧島!」


そこには今日いるはずのない男子生徒が立っていた。


「なんで…青森…」


「なんでって…あのまま終わりなんて、嫌だからな…」


「昨日…姉さんから何か聞いたの?」


すると青森は…頷いた…


「ああ…霧島の過去のこと…」


「っ!!」


私はすぐに扉を閉めようとした…が…青森が私の腕をすぐ掴んだ…


「嫌っ!!…離して…」


抵抗する私の腕をなんとか掴みながら青森は話した。


「霧島っ!!お前がお姉さんといつも比べられてきて、そこに劣等感を感じて努力をして…それでも追いつかなくて…心無い言葉を言われて

…それから人と壁を作るようになって…それでも!…変わろうとした努力を否定はするなよ…」


そう言われた時、私は思わず…らしくもなく声を荒げてしまった。


「知ったように言わないで!!…私が…私がどんなに努力してそれでも追いつかなくて、親すらも比べてきて…友達からも…姉の所詮は真似事…って友達だと思ってたのに…そう陰で言われてて…分からないでしょ!!あんたに…この気持ち!!」


ああ…こんな事言うつもりじゃなかったのに…昨日はごめんって言えばいいだけだったのに…私って…


「ああ!!…分からないね!!」


「!!」


予想外の返答に私は困惑してしまった…


「…だっ…だったら!!…」


「でも…それでも…昨日、俺とデートしようと思ったのは今の自分を変えようとそう思ったからだろ?」


「…!」


「いいんだよ…それで…変わろうと努力して、それを否定する相手の声なんか聞かなくていいんだ…」


「でも…過去は消えない…」


「そうだな…でも今は変えられるだろ?」


「!!」


なんでだろ…俺は、らしくもなく熱くなってしまった。まだ会ってまもない女子に…赤点回避のためか?…いや多分俺も昔、そう言われて救われたから…あの子に…


「あとさ…霧島…」


「?」


「服、着替えてこいよ」


俺はニッと笑いながら言った。すると霧島は赤面し扉を閉めた。

…が扉がまた開き、笑顔で


「…ありがと…いろいろ…」



そう言って扉は閉まった…はっ!!近所迷惑になってないだろな…俺は待ってる間、近所をパトロールしたのだった…



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