02 少女ニュートン、もうひとりの「フシギちゃん」に出会う
「セーボーバ、ラーアレー、シーニョーコン、ティーノー。セーボーバ、ラーアレー、シーニョーコン、ティーノー」
われらが
「イーキータ、リーイノー、レーソーネ、ロー」
『フィガロの
このときはちょうど、主人公フィガロが
美咲穂がお気に入りの一曲だ。
「イーキータ、リーイノー、レーソーネ、ロッシ! レーソーネ、ロッシィッ! レーソーネ、ロー」
歌い終わったところで、ちょうど下り坂も終わった。
「ふえふえ、計算どおりだわー。これなら
そのまま
やがてその道は、
「おや、美咲穂ちゃん。おはよう」
商店街のいちばん手前にある
「
「わはは!
「わたしはいつでも、トップ・ギアだわよー」
「わーはは! リチャード・ギアより強そうだー!」
オヤジはにわかに
「ところで美咲穂ちゃん、いいネジが入ったんだけど、どうかな?」
「それならオヤジさんの
「あちゃ! 一本取られたねえ!」
オヤジは少し、
「でもねえ、オヤジさんの頭はあいにく、右回りには対応してないんだよー」
「それならネジの
「わちゃあ! またもや一本、取られちゃったねー。なんだか美咲穂ちゃん、
「ふぇふぇー、よくわからないけど、ほめられちゃったよー」
このようにして
「それじゃわたしは学校があるから、またねー」
「たまにネジ、見ていってねー」
美咲穂の背中に手を
「いつもながら面白いオヤジさんだわー。ふぇふぇーっ」
元気よく手を振り、足を上げて、美咲穂は商店街の中を
「あーら、美咲穂ちゃん、おはよう」
「おはようございまーす!」
「美咲穂ちゃんはいつも元気だねえ」
「ふぇふぇーっ! わたしから元気を取ったら、なにが残るってゆーのー!」
「いや、それは……」
彼女はこの
しばらく歩いて、もう少しで小学校というあたりに差しかかったとき――
「引ったくりよー! だれか、
「ふえっ!?」
そして次の瞬間、しけた
「その人、引ったくりよー! わたしのバッグ、返してー!」
「はわわ! 引ったくりですってー!?」
中年男はここで捕まってはあいならんと、
「こらーっ!」
「――っ!?」
美咲穂はシマウマを思わせる
「悪いことはやめてーっ!」
「わーっ!」
しかし、彼女の
どんどん
「ワトソン、うしろにまわって! クリックはまっすぐ!」
どこからか、少女の声がこだました。
「はわっ!?」
美咲穂の
「ひゃーっ!」
いっぽうの犬がたちまち自転車に追いつき、中年男の進路をふさいだ。
そしてもういっぽうの犬が、前の犬と
美咲穂はその
「なんと、あの大きな二匹の犬が、『
美咲穂は
「ワトソン、クリック、よくやったわねー」
胸には美咲穂と同じ小学校の、一年生のネーム・プレートがつけてある。
「あなたがこの犬くんたちの、飼い主さんなのー?」
「そうだよー、ふしゅしゅ」
美咲穂が話しかけると、少女は
「ひょっとして、わたしと同じ学校の、一年生じゃないのー?」
「
「わっ、わっ! すごい
「わたしは
「カナちゃん!? すてきな名前だわー! じゃあカナちゃん、いっしょに学校へ行きましょう!」
「いいわねー、行きましょう、ミサホちゃん。ふしゅっ、ふしゅしゅ」
その後、
しかし、ドラマとは
*
美咲穂と可南は、
ちょうど小学校とは
「その犬くんたちの名前、面白いわねー。えーと、なんていったっけ?」
「青い
「なにか、意味のある名前なのー?」
「ワトソンとクリックは、アメリカっていう国の、科学者のコンビなんだよー」
「ふえっ、カガクシャ!?」
「ワトソンとクリックは、DNAの
「ふえーっ! ノーベル賞ですてえっ!?」
「ミサホちゃんも科学に
「ふえ! ノーベル賞は興味があって、調べたりしてるわねー。でもその、でぃーえぬ、とか、らせんなんとかは、さっぱりわからないわー」
「わたし、バケガクっていうのが好きなのよー」
「ふえっ、バケガク!?」
「正しくは『
「ふぇふぇー、
「ふしゅる!? 美咲穂ちゃんは物理学が好きなのー!?」
「そうだわねー。おかげで小さいころから、『フシギちゃん』なんて呼ばれてたのよー」
「まあ、なんてこと! わたしもずっと、『フシギちゃん』って呼ばれてるんだよー!」
「はわわ! これはきっと、神さまのいたずらに、違いないんだわ! 『フシギちゃん』どうしが、出会っちゃうなんて!」
「たしかに、びっくりだわー。でもわたしは、神さまに『ありがとう』って、言いたいわー。だってこんなに、すてきなめぐりあわせを、してくれたんだものー」
「まったく、そのとおりだわねー。神さまー、ありがとーっ!」
「……ところでミサホちゃん、いま何時か、わかる?」
「ふえ……?」
彼女たちは公園の時計を見た。
8時50分――
「カナちゃん……」
「ええ、ミサホちゃん……」
二人は顔を見あわせる。
「
こうして二人の『フシギちゃん』は、学校へとダッシュした。
そしてこれが、少女ニュートンにとって
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