婚活のススメその②、探す場所を考える
「さてと、それじゃあ次のステップだけど...見た目とかに関しては整えなくても僕としては別にいいかなって思う。ちょっと乱雑になってるから髪の毛は揃える必要があるかもだけど、忘れなければ髭は剃るだろうし体の傷とかも受け入れてくれないのならディーの結婚相手としては相応しくないからね」
「………そうか、じゃあ次はなんだ?」
「次はね、探す場所を決めようか」
「……探す場所?」
普通に街とかに行って探すのではダメなのか? というか俺はそのつもりで考えていたんだが...
「うん探す場所、ほら表沙汰にせずに内密に進めるって言ったでしょ? だから普通に街に行ってそこで条件を満たした相手をーって訳にはいかないから、探す場所を幾つか決めておいてそこで探し始めるって形にしようかなって。ずっと僕たちが付いていられるなら候補を挙げてその順番にっていけるかもだけど、流石に家族に仕事を終わるまで放置し続ける訳にはいかないからね。だからここで何処で誰を相手に探すのかっていうのを考えておこうかなって」
「なるほど。確かにそこまでして手伝って欲しいとまでいうつもりは無いから、ここでその辺りも決めておく方が良いか」
「そういうこと」
「それで、僕は幾つか候補があるけど幾つ聞く?」
「そうだな...全部教えてくれるか? 時間はあるからな、全部回るぐらいの余裕ならばあるだろうからな」
「そう? じゃあ全部だね。ちなみにノーダックは候補ある?」
「あるにはあるが、被っている可能性の方が高いだろうな。一通り話してから出ていなければ話すことにしよう」
「そっか」
この僅かな相談の時間で複数考えてくれたということか、それも表沙汰にせずに探すことが出来る様な場所を。凄いな、流石の交友関係の広さといったところか?
「まずは海を渡った先の小国」
「……小国?」
「そう、最近聞いた話だけど海を渡った先には小さい国が幾つかあるらしい。移動には時間が掛かるし、こっちに戻って来れるか分からないけどこっちでの話があんまり広がってないそこならディーも自由に婚活出来るんじゃないかなって思う」
「……なるほど」
小国か、確かにこの国のある大陸から離れれば俺のことを知っている人間はいないだろうし、そうなれば婚活が大事になったりする事はないか。それに海を渡るという点もここ最近における造船技術等々の発展を考えれば難しいことではないし、そもそも海を渡るくらいならば生身でも全然渡り切れるしな。ありだとは思うが、仲間や友人との繋がりがほぼ絶たれてしまうというのはあまり受け入れられんが...一度訪れてみたさはあるな。この大陸内で見つからなければ行ってみてもいいかもしれんな。
「次は奴隷商」
「……奴隷商? 珍しいな、お前からその名前が出るなんて」
「……まぁ、昔だったら忌避してたけどね。こうして色々と関わるようになってから視点を広くして分かったけど、奴隷商は満足に生きれない人たちが行きつく最後の砦だからね。忌避し続ける訳にはいかなくなったよ」
「なるほどな...とは言ってもだ、そこで見つけられるのは奴隷だけだろう? 借金だの犯罪だのを除いた上で考えてもだ、奴隷を妻にするというのは現状の方では認められないだろうしなにより対等にはなれないだろう?」
「うん、まぁ表立って奴隷と結婚するっていうのは出来ないね。だから結婚するなら式とか一切上げずに事実婚みたいな状態になるし、ディーの望んでる対等に願いを交換し合うなんて言うのは難しいだろうね」
「そうだろう?」
「うん、でも探すのならば一番幅広く見ることが出来ると思うよ。それにディーが願うのなら奴隷とその主っていう繋がりも外して対等な関係っていうのも多分目指せるようになる、というか目指せるようにするからね」
「……なるほど」
奴隷、奴隷か...確かに俺も候補の一つとして考えていたな。対等な関係を目指せるようにする………あぁそうか、隷属解放すれば奴隷ではなくなるな。その後の戸籍やらなんやらに関することは色々と考える必要があるかもしれんが、それに関しては実際にそうなった時にどうすればいいか考えればいいだろう。後は奴隷を手に入れる金と隷属解放するだけの金をどうするかだが...まぁ適当な依頼を数回ぐらい達成すればある程度まとまった金は手に入れることくらいは出来るか。
「それから娼館。身請けをする前提でもっと言えば王国でも帝国でもない場所にある娼館っていう前提はあるけどね」
「………娼館? 身請けをすれば確かに引き取ることくらいならば出来るだろうが、それを易々と受け入れる娼館のオーナーはいないだろう? そもそも場所によってはその身請け自体が法か契約によって禁止されていると思うが」
「うん、その話は聞いてるよ。そもそも娼館自体が無くなっているところも少なくはないよ、表向きはね」
「……表向き?」
「そ、表向き。裏では理不尽な契約で縛ってまともに給料も食事も与えてないような場所はあるし、娼婦を奴隷じゃないのに奴隷のように扱ってる場所も少なからずあるみたいだよ。ドワーフの王様から聞いた話だけどね」
「ふむ…………潰すか?」
「まだいいよ」
「そうか」
………娼館の娼婦か...確かに性欲を満たす目的以外で勤めている奴は生きるための最後の手段としての選択だから身請けが出来るのならば身請けをしてやるのが救いにもなるな。裏の娼館に関しては...そのうち数年以内にハルジオが全て叩き潰して解決させるだろう。邪魔になったり目障りになったしたら、まぁ関わった奴らを皆殺しにしてから後始末を適当な国に委ねれば解決だな。まぁ対等な立場になれるかと言われればなれない気もするんだが、その辺りに関しては記憶を封印するなり貴族家の養子にしてそこから引き入れれば解決だろう。その貴族の一族に名前を連ねることになりそうだが………辺境伯あたりならば早々面倒事に巻き込まれないだろうし、なんなら武力で片を付けられる場所も多いだろうから問題ないだろう。
「あとは、そう、そうだ。異種族っていうのも可能性はありだと思うよ、彼女たちならきっと受け入れてくれるだろうし対等になってくれるだろうからね」
「……エルフ、とかではないんだな? その呼び方をするということは」
「うん。彼女たちは、なんだろうね? 取り敢えず魔族ではないし人間種でもない、精霊や妖精とかの概念系っていう訳でもない...敢えて言葉にするのなら異種族っていうのが相応しいかな? まぁ今のところはだけどね」
「………ふむ...これはお前にも利点があるんだな?」
「うん、そうだよ。ディーと結婚すれば彼女たちに関する情報が増えるだろうし、なによりディーを介して彼女たちの存在が世間に浸透させられるからね」
「………そうか」
………………さて、どいつだ?
北の雪原の地下に生きる奴らか? 月光の下を居住地としている奴らか? 落とされた彗星から生まれた奴らか? 地の底の溶岩を揺蕩う奴らか? 悪性を取り込んで恵みを引き起こす奴らか? それとも俺の知らない奴らか?
………まぁどれにしたってこれまでに上がったのと比べても大きな問題というものは無いな。一部言語を理解するのが難しかったり、共存するのが困難だったり、欲求の方向性が特殊だったりするが...まぁ差したる問題ではないからな。確かに、こいつらを相手に婚活するというのも考えるべきだったな。何度か知り合ってどのように生きているのかとか移り住んだ時の新たな場所の調べ方とかを聞いていたが、今言われて思い出したな。何度か子種を要求されたし、性欲を満たすための対象として見られたこともあるから全然結婚の相手としては無しではないな。
「それで、最後だけど...名持ちの皆だね」
「…………それは」
「うん、これはあくまで最終手段だよ。ディーが望んでいないのも分かってるし、否定的に考えているのも分かってるけど...仲間であり友人であり幼馴染としての立場から考えるなら候補に入れるべきだと思うよ。絶対にね」
「………あぁ、分かった」
「うん。ま、あくまで最後の候補ってだけだよ。最初から行けなんて言うつもりはないし何だったら婚活しようとしてるなんてことは言わないよ(僕が死ぬしね)」
「…………そうか」
「………それで、ノーダックの候補は出た?」
「いや二つほど出ておらんな。聞くかディレウス?」
「……あぁ、聞かせてくれ」
「うむ、では告げよう」
「まず、一つ目は修道院だ」
「修道院? ……あぁ、元貴族令嬢のか?」
「知っておったか、そうだ。貴族令嬢が家を追い出されて送られた先の修道院、そこで妻を選別するのはありだと俺は思うぞ。結婚する相手としては申し分ないだろうし、追放される原因となった要素は間違いなく矯正されているからな」
「ふむ...面倒事にならんか?」
「ならん。修道女は皆神に仕える者であり、その身元を保証するのは人ではなく神とその信仰であるからな。お主が神にあまりよい感情を持っていないというのは知っておるが、それでもその保証は絶対であり圧倒な理由でなければ裁きが下るだろうな」
「……真っ当な理由か?」
「真っ当だろう? 寂しさを紛らわせるために婚姻の儀を結ぶ、あの戦いにおける最大の功労者の一人がそれを望むのならば神も快く見送ってくれるだろう」
「……そうか」
修道院、修道院か...あまりいい思い出が無いな。まぁ誰にも明言した事はないが、所詮は何度かあった女に惚れた経験が修道院の所属だったということでしかし軒並み高齢のレベルを超えて寿命一歩手前で、その死を見送る羽目になったというだけの記憶で別に何か俺にとって悪影響となることをされたわけではないからな。悪い思い出という訳ではないから別に探すのは悪くないだろう、惚れていたというのを考慮に入れると俺の本能的な好みにあったのを見つけやすいのかもしれんな...気乗りするかどうかと聞かれればそこまで気乗りはしないが。
「うむ、もう一つは貴族の末女だな」
「……表に出る必要がないからか?」
「それもあるが、一番の理由としては結婚相手の選別に個人の好みがしっかりと適応されるというのがある。より正確に言うのであれば第三子以降はそこまで家柄だのを拘ることがないのが風潮なんだがな、末女だと最低限の箔さえあれば受け入れてもらえるだろうからな。その点はディレウスならば何も問題はなく、俺のように過剰というわけでもないからな」
「ふむ………表舞台に立っていないし、名前も顔もそこまで出していないはずだが、大丈夫なのか?」
「問題ない。懸念点があるのならば家柄くらいだと思うが、その辺りに関してはお主の持っておる縁があればどうとでも出来るだろう」
「……そうか」
貴族の末、下手に継承権を争わせたりより多くの繋がりを求めたりすることがないのならば確かに相手としてのハードルは低い、か...ただ、その理論でいけば王族も問題ないだろうと言われて縁談を組み込まれる可能性が間違いなく出てくる。少なくとも女帝のところの四女は立ち寄った時の依頼を安請け合いした結果婚約者の権利がどうのこうのと言ってきたし、断る時に貴族以上の位にある人とは婚姻するつもりもありませんという断り文句を言っている関係上この案は出してくれたノーダックには申し訳ないがこの案で結婚相手を探すのは無しかな。
「なるほど...助かる」
「うむ、参考にしてくれ」
「候補としてはこのくらいかな? それじゃ、次は探し方について話していこうか」
「………普通にその場所に行って見つけるのではダメなのか?」
「うん、悪いとは言わないけど良くもないからね。結婚歴一回で婚活歴ゼロ回だけど、どうやって探していけば良いのかっていうのくらいは理解しているからね。女性の相手の仕方を教えてあげよう」
「……そうか...よろしく頼む」
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