第3話
「やばい、やばい!!」
最悪のルートをたどってしまった宏樹。
スマートフォンを使って次の列車を調べてみると、高崎川から高崎南駅に行くのが来るのは40分後の7時55分で、しかも行き違いの列車の関係で最終的に高崎南につくのは8時20分。
今日も顧問がいないので大会の顧問会議に自分の代わりに出るのだが、それが始まるのが8時ちょうどで、そこで一回戦のオーダーを提出しなければ、失格となってしまうかもしれない。
やばい。終わった
ここから会場までの距離も調べてみると8.4km。
走るという手も考えたが、これだけの荷物を持って走ってもまともに走れないし、そもそも走ることができない。
というか切符を外に落としてしまったのだ。
自分がただ乗りしてないという証拠をどうやって示せばいいのか。
「はあ。」
時間がたち、ほとんど一人占めになったプラットホームのベンチにため息をつきながらうなだれる宏樹。
自ら艦獄に入ってしまう不運さにため息をついた。
三ベンチ先に先ほどの社員達の上司でありそうなオイルライターで灯草をつけて空気中に煙をばらまいている、スーツを着た男に宏樹は文句を彼に言ってやりたかったのだが、それは可向想だなと思ったし、何より彼の部下を乗気でこうした訳ではないのだろう。
そんなことを思っているうちにその男も改札への階段へと向かって行っていって、Icを機械に重ねて軽やかな電子音をならしていった。
自分はどこまで不運なのだろうか。
過去のあれやこれやにため息をついて、悔しくなる。それを重ねているうちにそれらの感情をまとめようとして涙をつくろうとした。
「泣くんじゃないよ。 この兄ちゃん!」
フェンスの外から声がした。「泣いちゃだめだめ!!そんな所で泣いても、お前さんの涙がこんなコンクリートでできた無機質な所は 受けとってくる訳ないんだからさ!」
ふりかえってみると駐輪場からしわだらけのおばあさんが ほうきをもってこちらに向かって来ていた。
恐らくこの駅の清掃員なのだろう。
「あ、すみません。」宏樹は驚きながらこうかえした
「それにしてもどうしたんだい?」
「こんな朝早くでこんな所で泣かなくていいじゃない。列車の中で好きな女の子が他の男の子と手をつないでいるのを見てしまったのかい?」
「いいやちがうんです。」
宏樹はここ十数分で起きたことを話した。
すると、「よしわかった、駅員さんに話して、お前さんをここから出してやるよ。」
「それにお前さん急がなくちゃいけないんだろう?」
「それなら私 のバイクにのっけてやるよ。ただしタダじゃないからね、お前さん500円さんもってるかい?」
宏樹はリュックサックの一番前のファスナーをあけて、サイフの残高を確認する。
中には五百円で2枚を100円玉三枚。これなら帰り代の切符も買える。
「あったよおばちゃん!!」と宏樹は五百円玉のきれいな方をゆび ではじいて、フェンスをこえさせた。
ナイスキャッチ。
トスがよかったのか五百円王はきれいにしわだらけの左におさまって、
「オッケー、それじゃすこしまってね。」とおばあさんは駅の階段の方へとセコセコと向かっていった。
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