第4話 算数のバトル


美雨は算数がとにかく苦手だった。



まず計算が遅いし、時計も読めないし。



美雨があまりに算数が出来ないので、宿題の時、母親が登場するのだが、母親の言っている事がよく分からないと美雨は怒り出してしまうし、母親も鬼のようにヒステリーを起こすので、美雨は大泣きして反発し、壮絶なバトルになる。


母親は最後に必ず、美雨のホッペにビンタする。


そこへ祖母もやってきて、「もっと叩きなさい!」と言い、美雨の反対側のホッペにビンタする。


往復ビンタの出来上がりだ。



そんな状態を見るに見かねて、静かに父親がやってくる。


「そんなに怒るなよ。」と静かに言う。



広告の裏が真っ白のものを探すと、その白い部分に鉛筆で分かりやすく説明しながら書き、美雨に算数を教えてくれる。



その静かな優しい話し方で美雨は落ち着き、泣くのをやめて静かに聞く。



「どうだ?分かるか?」と父が言う。



「うん。」と美雨が言う。



それを見て母親が「なんで私が怒られなきゃいけないの!!!!」とまたヒステリーを起こす。



怒られてはいないけれど、怒られたような気持ちになったのだろう。



後日また美雨と母親は算数でバトった。



その時母が言った。



「あんたのせいでまた私がいっつも怒られるんだから!」



後日、美雨は知らない家に連れて行かれた。



優しそうなニコニコした女の人に、母親が「どうぞどうぞ宜しくお願い致します。」と頭を下げていた。



美雨はそろばんを習う事になったのだ。



その優しそうな女の人は美雨に缶入りのアーモンドをくれた。



どうやら外国のお土産のようだ。



良い人なのかもしれないと美雨は思った。



そろばん塾に通うようになり、美雨は計算が嫌いじゃなくなった。

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