第一話 5/9

ひょっとして、レスキュー系の方ですか?


違う。


もしかして、突撃系の動画配信者?


違う!


……じゃあ、変質者?


…違うわ!ダボ!


□□□


 気がついた時には、倉庫の外にいた。


外の夜気に触れた瞬間、ようやく自分の息が上がっていることに気付く。


立ち止まり、ゆっくり息を吸って、吐く。


暗闇のトレイルランで乱れた息を整える。


 倉庫の中では足が勝手に動いた。余計な事を考えられないまま。


道がねじれて歪んでいく感覚の中で、わけもわからないまま進み続けた。


どこをどう進んだのか、自分でもはっきりと覚えていない。


迷路のような道をくぐり抜け、ついにやっと倉庫を出られた。


片田舎の何の変哲もない空き倉庫は、別世界のように変貌していた。


街には相変わらず霧がたち込めている。


 霧の中へ入ってゆく。


霧の中は一段と気温が低く、長袖でも肌がひんやりとする。


……まいたべ。


アオさんが急に立ち止まり、呟いた。


気がつくと、私たちは路地裏に立っていた。


倉庫街の裏手、見覚えがある場所だと見当がつく。


本当に?


私が念押しに確認すると、アオさんはこくり、と頷く。


安堵、興奮、困惑…、雑多な感情がない交ぜになり、私はアオさんを質問攻めにした。


つり橋効果、という奴かもしれない。


年甲斐もなく、彼女に矢継ぎ早に質問を浴びせた。


そんな私への、彼女からの最終的な回答はこうだ。


しつけぇな。黙って感謝しときゃいいんだよ。


アオさんは頭を掻きながら、それっきり口をつぐんだ。


 彼女はしばらくの間、目の前を漂う白い霧の塊を、じっと睨んでいた。


なんか寒くね?


ようやく、彼女が言葉を発した。


――だから、焚き火しようぜ。


……は?――焚き火?


私が怪訝な目を向けると、「こんなん朝飯前よ!」

アオさんがポケットからライターを取り出した。


ライターケースが強く鈍い光を放った。

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