第2話 馴れ馴れしいライバル校の女子

 「はい?」

 これまで会ったことのない相手だとあいは思った。

 でも制服はわかる。

 瑞城ずいじょう女子高校の制服だ。

 瑞城女子は、愛の通う明珠めいしゅ女学館じょがっかん第一高校と同じいずみはらにある、明珠女と同じ女子校だ。

 でも、共通点は「女子校だ」ということぐらいだ。それ以外は「何から何まで」と言っていいほど、違っている。

 その瑞城女子の子は、背の高さは愛より少し高く、髪が長く、活発で精悍せいかんそうな感じのする子だった。

 知り合い?

 いや、瑞城の子に知り合いなんかいない。

 明珠女学館第一高校の生徒と瑞城女子高校の生徒は仲が悪いのだ。

 同じ街にありながら、というより、同じ街にあるからいっそう、だろう。

 校風も、明珠女一高がしっかり勉強させられる進学校、瑞城がゆるい雰囲気のお嬢様学校だ。

 「お嬢様」と言ったとき、おっとりしたものしずかな女の子を想像するか、それともわがままで暴れ者で手がつけられない女の子を想像するか。

 愛はお嬢様はおっとりしてものしずかなほうが「お嬢様」に似合っていると思う。

 ところが、この瑞城女子という学校の「お嬢様」たちはそれと違うほうなのだ。

 だから、できるだけ普通話しかけようとする。

 瑞城の女子が暴れたりしないように。

 「わたし……に、何か?」

 「いや、さあ」

 れ馴れしい声で傘の持ち主の瑞城の子は答えた。

 「明珠女の子がさ、心細そうに雨宿りしてるからさ。同じ街から来た者のよしみとして、さ」

 そして目を細くしてくすすっと笑う。

 「は、はぁ……」

 思わずまわりを見回す。相手の子はまた言う。

 「やだなあ。箕部みのべまで来て人目を気にすることないじゃない? それとも、瑞城の子なんかに近づいたら、バカがうつる?」

 「いや、そんなことは」

 慌てて否定する。その女の子はまた短く笑った。

 「じゃ、いいじゃない。どこ、行きたいの?」

 「あ、いや」

 あいまいに相手の顔を見上げて、答える。

 「帰る……ところなんだけど」

 「じゃ何しに来たわけ?」

 相手は下のほうにちらっと目をやった。学校の鞄一つしか持ってないのを確かめたのだろう。

 そして、買い物に来たのなら、何か別の袋でも持っているはずだ、荷物が少なすぎる、と思ったのだろう。

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