大好きなプリンを手に入れるには
清瀬 六朗
第1話 五月の雨
ショッピングモールから出たら、外は雨だった。
やっぱり置き傘を持って来るべきだった。でも、現実には持っていないのだから、いまさらそう思ってみてもしかたがない。
雨は激しくはないが、雨粒は途切れることなく落ちてくる。
ちょっと外に出ただけで肩が濡れる。
ここから
だから傘はなくてもなんとかなる。
「なんとかなる、よね」
つぶやく。
でも、なんとかなる、と、なんとかする、とは違う。
なんとかなる、と、何とかする気になる、も違う。
駅まで雨に濡れながら走る気力はなかった。だからといって、わざわざ傘を買うためにショッピングモールに戻る気もない。
ショッピングモールの角、ショーウィンドウの上にかかった雨除けの下に入って雨宿りする。
雨宿りしていれば、そのうち、やっぱり帰らなきゃ、という気にもなるだろう。
早く帰ったほうがいいのは、頭ではわかっている。
空を覆っている暗い雲は「十種雲形」のうち「
たぶん、待てば待つほど、
でも、と、自分の考えがループしそうになって、
すうっ、と、頭の上に傘が現れたとき、それはたまたま通りがかりの人が道の脇に寄ったからだ、としか思わなかった。
ここはショッピングモールの角なのだから、道のまんなかのほうが混むと通行人はこの角のほうに寄ってくる。傘をさしてだれかとすれ違うために、この道の脇に寄ったのかも知れない。
でも、愛の頭の上の傘はいつまでもどこにも行かない。
もしかすると、この傘の持ち主はここで待ち合わせなのだろうか。
だったら、場所を空けて、隣のショーウィンドウの覆いの下に移ろう、と、顔を上げて、その傘の持ち主のほうを見た。
傘の持ち主は、愛を見て親しげに笑いかけている。
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