第7話顧問の先生の提案

クラブ活動にはクラブの子供達を指導する顧問の先生がいるよね。

謎クラブの顧問の大井先生は、いつもクラブの時間、部屋のすみで居眠りをしているんだ。

その大井先生が、今日は眠てないで教壇に立っていた。

ー何があったんだ?。きっと奥さんに学校で寝るなって怒られたんだ。大井先生の奥さんはすごく怖いってみんな言ってるもん。ー

「みんな、いつも人助けご苦労さま。実はみんなにお願いがあるんだ。人を探して欲しい。みんなも知っている用務員のおじさんが家にも学校にも戻ってこないんだ。」

「え?。あの優しい用務員のおじいさんが?。どうしたんだろう?。」

「彼はまだ50代だよ。おじいさんなんて言ったらかわいそうだ。」

自分も50代の大井先生は変なところで憤慨して、それでも先を続けた。

「君達の力を合わせて、用務員さんをぜひ探し出して欲しい。」

「でも、用務員さんの家族の許可とかとらないと、問題になりますよ。」

学が手をあげて言った。

「用務員さんに家族はいないし、校長が私に頼んだんだ。私の能力を信用しているんだろう。それに、私は用務員さんと飲み仲間だから、用務員室にも何度も行った事がある。」

「用務員さんは、用務員室に住んでたの?。」

「ああ、夜の警備もかねてたんだ。」

「用務員さん、最近なにか言ってませんでした?。」

「それが、酒に酔うとガンダーラに行きたいって何度も言ってたんだ。」

「ガンダーラってなんです?。」

「ガンダーラって古いTV番組の主題歌で、そこに行けば、どんな夢も叶うって言ってたよ。懐かしいな、子供の頃夢中で観てた。」

学がガンダーラの歌の説明を声に出して読んだ。

「苦しみのない自由な国、そんなユートピアがどこかにあればいいのになぁ”。

ギリシャ語で「どこにもない場所」という意味のユートピアが、この世に存在するはずはないと知りながらも人はそこに行くことを夢見る。」

みんなちょっとシュンとなっちゃった。

「用務員さん、なにかに悩んでたのかな?。」

クリスの言葉に大井先生は、

「ひとりぼっちの老後のことを考えたら、イヤになっちゃったかもしれない。実は用務員さん、校長から自主退職を勧められたらしいんだ。それで校長もそのせいで自殺でもされたらイヤだと思ってるみたいだね。」

「用務員さん退職したら何処に住むの?。」

「あの年で仕事もないと、住むところも借りられないだろうね。」

「え?。あんなに優しい人が、そんなの可哀想。」

「みんな、用務員さんを探し出そう。」

聡の掛け声でみんなは動き出した。

クリスがクーにカードを選んでもらった。

研磨はケルに用務員さんの匂いを追ってもらった。

聡と学と大井先生は三人残って話し込んでいた。

「ガンダーラって、どこにあるの?。インドかな?。」

「古代インドで、今はパキスタンにあたるんだ。」

「じゃあ、用務員さんパキスタンまで行っちゃったのかな?。」

「まさか、彼には金もないし、パスポートもとったことないって言ってたよ。」

大井先生は用務員さんとかなり仲が良かったみたいだ。

「用務員さんの中では、ガンダーラって夢がかなう場所っていう意味だったかも。用務員さんの夢ってなんだろう。」

「うーん、夢の話なんかしたかな?。」

「じゃあ、すきなものは?。」

「ああ、古いアニメが凄く好きだった。なんてい名前だったかな。昔はやった奴。」

「用務員室を探したら、なにかヒントがあるかも。」

三人は用務員室の捜索を始めた。

しかし、狭い用務員室には生活必需品しか置いてなかった。

「なんにもない。先生、アニメの名前、思い出しました?。」

「うーん、出かかってるんだけどな。後、一押し!。」

「いったい、どこ押せばいいの?。」


聡と学と大井先生は用務員室に行って、なにかヒントがないかと探した。

用務員室は狭くて生活必需品だけがおいてあった。

「なんにも無いよ、ヒントは何処にあるんだろう。」

「新聞の切り抜きがある、これ、古いアニメを舞台でやってるんだ。静岡市だね。」

「そうそう、このアニメ。コレが彼の理想だって言ってた。彼のユートピア、つまりガンダーラだ。」

「じゃあ、コレを観に行ったのかな?。」

3人は静岡市の舞台をやっているビルに行った。

「すみません。この人を探してるんですけど。」

「ああ、新しく入った掃除のおじさん。ほら、あそこにいますよ。」

「用務員さん、ここで何してるんですか?。僕たち校長先生に頼まれてあなたを探しに来たんですよ。」

「大井先生、子供たちもすまなかった。校長先生に自主退職を打診されて、これからどうしたらいいのか分からなくなって、大好きなアニメが静岡の舞台でやっているって知って、ふらっとここに来ちゃったんだ。」

「用務員の仕事を辞めるつもりなんですか?。」

「それが、ここに来て分かったんだ。自分がどれだけ用務員の仕事が好きだったか。」

「校長先生にその気持を話して、仕事を続ければいいさ。僕たちも校長先生にお願いしてみるから。」

「大井先生、ありがとう。」

結局、用務員さんは無事に用務員の仕事を続ける事が出来るようになった。

「あの古いアニメを見て、どんな環境でもまっすぐに、自分の正しいと思ったことを実行出来る主人公が自分の理想でした。今まで他人の目ばかり気にして、今を真剣に生きてなかったし、将来の事なん考えもしなかった。でも、これからは、用務員の仕事をさせてもらえる間は、真剣にこの仕事に取り組みます。そして、将来どうするかも計画を立てたいと思ってますよ。」

用務員さんは大井先生と謎クラブのみんなに話した。

「何だか、用務員さん、前より明るくなったみたい。」

「吹っ切れたんどろうな。」

「父さんが言ってた。これから日本はもっと大変になるって。」

「僕たちは、人間と妖怪と怪獣が一緒に幸せになる方法を探すんだろう。」

「そうだ、その上で、人の役に立ちたい。」

「君達は、もう素晴らしい生き方を実行しているよ。僕が君達くらいの頃、なんにも考えないで毎日を過ごしていた。恥ずかしいよ。」

大井先生は頭を掻きながら言った。

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