夢織ル詩集
黒種草
夜の鯨
夜の鯨が泳いでいる
濁った空にただ一頭 白い腹を晒している
私は夜を泳いでいる
千切ったパンを食べながら 夜が白むまでただ揺蕩う
眠る町の蔓薔薇が歌う もうすぐ花が咲くでしょう
酔った鼠が頭を振って 朝日にゃ勝てぬと唾を吐く
錆びた鉄橋 踊る白雲 貨物列車の汽笛が鳴れば
やれ珍しや 山の白蜘蛛 月に糸吐き網かけた
夜の鯨は泳いでいる
濁った空と澄んだ月 横目に見ながら私を呼ぶ
私は夜を泳いでいる
千切ったパンは食べ終えて 山の向こうを指で差す
「もうほら夜が明けてしまうよ」
鯨は笑う ではまた夜に 髭を振るわせ夜空に溶ける
私は欠伸 ではまた夜に 泳ぎ疲れて家路を辿る
烏が鳴いて 私は眠る 眠りの中で また夜を泳ぐ
夢織ル詩集 黒種草 @niger_kurotane
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夢織ル詩集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます