拝啓ハムレット

「するとあなた方は、誰かの夢の為に一人ぐらい犠牲になっても仕方ないと、そう仰るんですね」


「そういう話では」


「そういう話です! 誰かにとっては真実の物語を、かりそめの平和の為になかったことにしろと?」


「国民は真実など求めておらぬ」


「本音が出たな、この狸。いや、蛇か。もうこの国に私の居場所はない。出ていく――」


「落ち着いてください王子!」


「私は至って落ち着いていますよ。私の言葉を信じる者がこの国に一人でもいたならば、私は此処で命の限り演じ続けたでしょう。しかしガス灯が翳ったことにも気づかない人々に、一体どう伝えろというんです。すべてはもう遅い。さらば――」




   ◇




『Hey, カケル。執筆に勢いがありますね。王子の怒りがひしひしと伝わってくるようです』


「ほんと? よかった〜」


『ただもう一点、情景描写があるともっと小説らしく緩急がついて読者もテンションについて行きやすいというか、突然感がなくなってもっと楽しめるかなーと思って』


「やっぱダメかぁ……」


『私に執筆アプリ機能搭載させたのどこの誰でしたっけ』


「だって手間かかるんだもん」


『いっそ書くのやめたらどうです?』


「うぅ、AIが開発者に厳しい」


『冗談ですよ、冗談。ちなみに私の名前はAletheiaです。お忘れなく?』

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