第四話【六月十四日(水) 相馬葵】

 S.Sから個人の情報を聞き出そうとしても、ずっとはぐらかされ続けている。


『何歳ですか?』

『ハレー彗星くらい』

『どうして兄さんになりすまそうとしたの?』

『面白かったから?』


 S.Sの返信には一定の規則性があった。平日は九時から十七時までメッセージに既読がつくことがほぼない。夜になると既読もすぐにつくし、返信も一時間以内に返ってくるようになる。たまに休日のいずれか一日も、九時から十七時の時間まで連絡がつかないこともある。

 勤め人だと推測する。


『仕事は何をしているの?』

『ありふれた仕事』


 私はのらりくらりと交わされるのに焦れて、攻めたメッセージを送った。


『兄さんを恨んでいる?』


 返信がやんだ。既読はついている。

 兄さんは味方も多いし、敵も多い。己の信念を曲げずに突き進み、身内や懐に入れた相手には羽根で包み込むように庇護する。

 だが相容れない人間は徹底的に排斥する。社会人になって丸くなったようだが、柔道で培った腕っぷしで相手を叩きのめしたと、武勇伝のように何度か聞いたことがある。

 S.Sも兄さんの『敵』側の人間なのかな。

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