プレイ17:第一回イベント③

ジェーン・ドゥ、またの名を『名無しの権兵衛』。


かつて、【フルメタル・オンライン】というSF風の世界観が売りのVRMMOゲームにて、トップゲーマーとして君臨していたプレイヤーの名だ。


ジェーン・ドゥの武器は、何の変哲もない二本のナイフだけ。


しかし、彼女はそのたった二本のナイフだけで、【フルメタル・オンライン】の悪名を轟かせていたPK集団を殲滅しただけではなく、強い武器や装備を纏っていたプレイヤーまでも秒殺していたため、【フルメタル・オンライン】内では最強のプレイヤーとして知られていた。


何故、ゲーマーではない俺が彼女のことを知っているのかって?


実のところ、俺が観てきた動画の中には、ジェーン・ドゥ関連のモノも少なくなく、主に切り抜き動画という形でネット上に残されていたため、俺自身、遠い存在だと思っていたんだが......まさか、そのご本人が【ユートピア・オンライン】にいるとは思わなかったけどな。


と、そんなことを思っていたら


「考え事をしてたらダメだぞ☆」


いつの間にか、ジェーン・ドゥに距離を詰められていた。

 

「【妖精の粉フェアリーダスト!!」


しかし、間一髪のところでスキルを発動したことにより、ジェーン・ドゥの攻撃を受けることはなかった。


あ、危なかった.......


「へぇ、そういうスキルもあるんだ」


状態異常になりつつも、面白そうと言わんばかりにそう言うジェーン・ドゥ。


その目は、狩人の目をしていた。


「それなら.......これはどう!!」


そう言った後、ジェーン・ドゥは二本の短剣から斬撃を放った。


「【連続切り】!!」


すると、その斬撃は分裂し.....俺に向けて飛んでくるのだった。


「【強欲グリード】!!」


俺は、すぐさま【強欲グリード】を発動させ、黒い手を使って攻撃を防ごうとした....が


「っ!?」


全ての斬撃を防ぐ事は出来なかったのか、俺のHPは削られるのだった。


「【強欲グリード】.....なるほどなるほど、そゆことか」


俺のスキルを見て、何かを理解したのか、ジェーン・ドゥはそう呟いた後


「それ、【七つの大罪】シリーズのやつでしょ?」


ニコッと笑いながら、そう言った。


てか、今【七つの大罪】って言ったか!?


「あ、図星みたいだね」


ニヤニヤと笑いながら、そう言うジェーン・ドゥ。


「【七つの大罪】について......何か知ってるのか?」


俺がそう尋ねると、ジェーン・ドゥは


「知ってるよ。何だったら、あなたと同じように【七つの大罪】のアイテムを所有しているプレイヤーのことも知ってる」


二本の短剣を構えながら、そう言った後、こうも言った。


「でも、強欲の名を持つアイテムが仮面だったのは予想外だったけどね」


ジェーン・ドゥはそう言うのと同時に、俺の背後に行き.....攻撃を行った。


「しまった!?」

「後ろがガラ空きだぞ〜」


俺は再びダメージを喰らったものの、その直後に【強欲グリード】を発動させ、ジェーン・ドゥを捕まえようとしたが.......逆に、ジェーン・ドゥはその攻撃を躱し、もう一度俺に攻撃しようと近付くのだった。


「なぁ、アンタ本当に状態異常のデバフが掛けられてるよな!?」

「掛けられてるよ。でも、あえて回復しない方が楽しいじゃん!!」


.....うん、間違いない。


この人は本物のゲーマーだ。


そう思いながら、【蝶の舞】を放つ俺。


ジェーン・ドゥは、その攻撃を避けようとしたものの、水流のように動く小さな蝶の群れを避けることが出来なかったのか、HPが削られ、空中に飛ばされたのだが


「あらら!?やられちゃった!!」


ジェーン・ドゥは空中で態勢を整えると、そのままこっちに向かって落下してきた。


「【風の刃エアカッター】!!」


そんな彼女に対し、俺は【風の刃エアカッター】を使って、攻撃をした。


一方、自身に向けて刃が放たれたジェーン・ドゥはというと


「【かまいたち】!!」


自身の持っているスキルを発動させ、大きな斬撃を二つ放った。


その斬撃は、風の刃を次々と無効化していき....俺は、その攻撃を何とか躱したが


「嘘だろ!?」


その斬撃はブーメランのように方向を変え、再び俺の方に向かってくるのだった。


「【強欲グリード】!!」


俺は、その攻撃をスキルで受け止めるのと同時に、そのスキルを使って、落下してきたジェーン・ドゥを捕まえようとした。


しかし


『終了〜!!』


というマスコットの声が聞こえるのと同時に、俺達は手を止めた。


どうやら、イベントが終わったらしい。


「あ〜あ、もうちょっと時間があれば良かったのにな」

「それは俺も思った」


ニッと笑いながら、そう言う俺とジェーン・ドゥ。


こうして、第一回イベントが終わるのだった。

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