プレイ3:お手伝いクエスト

【ユートピア・オンライン】では、他のゲームと同じように、クエストと呼ばれるものがある。


クエストと言っても、討伐クエストに採取クエスト、定期的に発生するデイリークエスト、あとは話を聞くだけのスキットクエストなどなど、たくさんの種類のクエストがあり、今回発生したクエストはお手伝いクエストと呼ばれるものらしい。


「えっと.....クエストの内容は.......」


お手伝いクエスト【お面屋のお手伝い】

〈依頼内容〉

店内の掃除と商品の整理

〈報酬〉

【仮面使い】への転職


「【仮面使い】?」


へぇ!!そんな職業があるのか!!


ちょうど職探しをする手間が省けるし、やってみるか!!


そう思いながら、クエストの画面の決定ボタンを押す俺。


「で、どうする?やるか?」

「や、やります!!」


老人の言葉に対し、そう答える俺。


一方、その言葉を聞いた老人は


「そう言うと思ったわい」


俺に向けて、ニンマリと笑った後、老人は俺を店の中へと案内した。


店の中は、外に置かれていた仮面と同じように、怪しい仮面が所狭しと並んでいて、その光景を見た俺は、お化け屋敷に入った時のような感覚になるのだった。


「どうだ?凄いじゃろう?」


俺に向け、自慢げにそう言う老人。


「......何というか、個性豊かですね」

「そうじゃろうそうじゃろう!!何せ、ここにある仮面は、ワシが真心作ったものだからな」


ジイさんが職人だったんかい!!


「じゃから、あんまりぞんざいに扱うんじゃないぞ」


俺に対し、注意するかのようにそう言う老人。


.......多分、仮面に何かしたらクエスト失敗になるんだろうな。


「と言うわけで、お前さんには色々と掃除してもらうぞ」


そう言った後、俺に箒を手渡す老人。


そんなわけで、俺は掃除を始めたのだが......このクエスト、中々にキツい。


というのも、掃除は掃き掃除だけではなく..........商品である仮面が置かれている棚を拭いたり、物置きを整理したりと、掃除なだけに体力仕事が多く、HPが減ってないのにも関わらず、現実と同じように疲労が溜まっていく感じがした。


「物置の整理が終わりました!!」

「そうか、じゃあ次は.......仮面を綺麗にするぞ!!」


そう言った後、老人から昔懐かしいハタキを手渡された俺は、老人と共にハタキを使って、再び掃除をし始めた。


「えっと.....その」

「ゴンでいいぞ」

「ご、ゴンさんはいつから店をやってたんですか?」


俺がそう尋ねると、ゴンさんは


「そうだな......お前みたいな青い頃に店を継いだな」


と言った。


「店を継いだ.....ってことは、ゴンさんの家族が店をやってたんですか?」

「あぁ。ワシの家は先祖代々仮面を作る職人でな、親父も爺さんも仮面職人だったわい」


ハタキで仮面を掃除しながら、そう言う老人.....もとい、ゴンさん。


はぇ......NPCとはいえ、設定が凝ってるなぁ。


「そういうお前の名は?」

「俺ですか?俺はハチと言います」


俺がそう言うと、ゴンさんは


「ほぉ!!そりゃいい名前だな!!」


と言った。


..........何か、プレイヤー名を褒められると嬉しいな。


「ゴンさんの名前もカッコいいですよ」

「そうかの?」


俺の言葉に対し、照れながらそう言うゴンさん。


そんなこんなで、仮面の掃除をすること数分後..........俺とゴンさんは、何とか掃除を終わるのだった。


「さて、ここらで掃除を終えるとするか」


そう言った後、店内にある古びた椅子に座るゴンさん。


「ふぅ....やっと終わった」


ゲームとはいえ、掃除で疲れるとは思わなかったな。


と、そんなことを思っていると、再びクエストの画面が出たかと思えば


〈クエスト【お面屋のお手伝い】が完了しました〉


という音声が聞こえたかと思えば、その画面にスタンプらしきものが押された。


どうやら、これでクエストが完了したらしい。


〈クエスト完了の報酬として、職業【仮面使い】に転職しますか?〉


「YES‼︎」


そう言った後、決定ボタンを押す俺。


すると、俺の体は光り輝いた......かと思えば、その光はすぐに消えてしまった。


こうして、俺の初クエストは終了したのだった。

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