最終話:2121は愛のサイン。

ハジメと一緒に家に帰ったメーヴェはギャル曽根ばりに、一番家のご飯を、

お父さんの分もお母さんのぶんもたいらげた。


「まあ、よく食べる子ね」

「あ、そうそう、あんたたち今日、都心で大変なことがあったみたよ」


母親がそう言った。


「またエイリアンの侵略みたいだぞ」


今度は父親の発言。


「なんか女の子が一人で侵略者を撃退したんだって」

「掃除しながらテレビ見てたからそう言ってたわ、詳しく知らないんだけど・・・」


「まあこの辺に被害がなくてよかったんじゃないか」


「そうよ、そうよ」


自分に直接被害が及ばなければ、みんな対岸の火事なのだ。

ハジメとメーヴェは顔を見合わせて笑った。


お腹が満腹になったあとハジメとメーヴェはハジメんちの家の申し訳程度の

ベランダにいた。


「狭いなこのベランダ・・・とってつけたみたいに・・・」


「窮屈・・・ハジメちゃんの病気が移りそうですぅ・・・」


「僕は病気なんか持ってないよ」

「ところでさ、メーヴェはこれからもずっとここにいるんだよね?」


「そのつもりだけど・・・離婚しないかぎり」

「ハジメちゃんは?・・・私にいて欲しい?」


「そりゃいて欲しいに木待ってるけど、今どさくさに紛れて離婚って言った?」

「結婚もしてないのに・・・ってか婚約もしてないのに?」


「いて欲しいの、いて欲しくないの?」


「いて欲しいに決まってるだろ・・・でも強制できないからね」

「束縛したくないし・・・どうしても帰るって言われたら止められないだろ?」


「止めないの?・・」

「ハジメちゃんの私に対する気持ちってそんなものなの?」

「じゃ〜私たちもう別れ?」


「別れる?・・・」

「もうメーヴェが離婚なんて言うからややこしくなるんだよ」

「俺たち付き合ってるんだよ」

「今日、すごいことがあったから、忘れそうになったけど」


「忘れるなら、私はそれでもいいけど・・」


「いや、いや、いや・・・忘れたりしないよ」

「僕の彼女になってくれたばっかなのに・・・」


「矛盾してるね」

「私に帰って欲しくないんでしょ?」

「なのに帰るって言っても止めないって、おかしくない?」


「そんなに責めるなよ・・・正直言うと帰って欲しくないよ」

「止めないなんて・・・強がってみただけだってば・・・」


「そう・・・ハジメちゃんの気持ちが大事だからね・・・私には」

「安心して・・・ずっと、いるつもりだから」

「でも、浮気なんかしたら怖いよ、分かってるよね」


「しないよ・・・ギガトンパンチ食らいたくないからね」

「でも僕は、あんな強烈なシーン見ても君のこと不思議と怖いって思わないよ」


「あんなに街を破壊したのに?」

「どこの星だって、あんなことしたら追い出されるよ」

「なのになんの、おとがめもなかったね」


「政治家は国民のためとか言ってながら自分の私利私欲に夢中だからね、

世の中が国民がどうなろうと関心ないんじゃないか?」

「それに地球を守ってくれたんだから逆に感謝してもらわなくちゃな」


ハジメはほんとにそう思った。

上にいる人たちは、どこの星も似たようなもんなんでしょうね。


メーヴェはなげかわしいって言うように言った。


「それに地球人は少し平和ボケしてる・・・危機感まるでないんだもん」

「目の前にある危機も他人事だと思ってるからダメなんだよ」


「言えてる・・・」


「そう言うのが一番危ないんだよね」

「イチゴのオバさんみたいなやつがいる限り油断はできないからね」


「だから、私はずっとここにいたほうがいいんだよ」

「もし、私がいなくなったせいで地球の人やハジメちゃんに、もしものことが

あったら私一生後悔しちゃうから・・・」


「え?そんなふうに僕のこと思ってくれてるの?」


「当たり前でしょ」

「私もハジメちゃんの彼女になったことだし、また街に出てあなたとも

デートしたいからね・・・美味いものたくさん食べてね」


「そう言う充実した時間を共有するのが恋人同士って言うんだろ?」


「そうだね・・・恋人同士・・・恋人っていい響き・・・」


「じゃ〜さ・・・手始にチュー・・・とかしていい?・・・チューとか」


「ウイルスが移るからやだ」


「そんな連れないこと言わないでさ・・・ウイルスなんか持ってないよ」

「今、恋人って言ったじゃん」


「私とハジメちゃんもほどよい関係がいいの、ほどよいバランスがいいの」


「そう言うのは無理にバランス取れてなくてもいいんじゃないか?」

「人の心は揺れ動くもんだろ?」

「じゃないと、いつまで経っても君に近づけないよ」


「じゃ~100回歯磨いてきたらチューさせてあげてもいいよ?」

「あとお風呂に入って体洗って綺麗にしてきたらハグもさせてある」


「ハグはまあいいとして・・・」

「歯磨き、ひゃっかいって?・・・百回はちょっとな・・・」

「せめて半分の50回にしてくれないか?」


「バカハジメ・・・本気にして・・・」


「え・・・うそ、今のからかったの?・・・勘弁しろよ本気で歯、50回磨いて

こようと思ったじゃん」


「いいよ、チューして・・・ハグも・・・」


「まじで?」


「10秒あげる・・・」

「私の気が変わらないうちにしたほうがいいと思うけど・・・」


「じゃ〜早くしないと・・・」


慌てたハジメは、勢い余ってバランスを崩してメーヴェにのしかかった。


「なにしててる?」

「慌てないの・・・このヘンタイ!!」


「なにもしてないだろ、バランス崩しただけだよ・・・それをヘンタイって」


「ハジメちゃんはほんとに不器用だね・・・でもそういうとこ私、好き」

「不器用で可愛い・・・そんなハジメちゃん」

「大好き」


「じゃ〜私からハジメちゃんにプレゼント」

「ハジメちゃんにエンジェルナンバーをあげる」


「エンジェルナンバー?・・・なにそれ」


「エンジェルナンバー2121」

「2121この数字はハジメちゃんが今まで努力してきたことが報われて

夢や目標に向かっていけるよう応援しているって意味があって、そして

これからのハジメちゃんの新しい始まりでもあるの・・・私とのね」


「2121は愛のサインなんだよ」


今度はバランスを崩すことなくハジメはメーヴェとチューしてハグした。

この二人のラブラブ?な関係が長く続くといいね。


おしまい。



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エンジェルナンバーは2121。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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