第8話:カオス。

「ザクロのバカめが・・・小娘風情に簡単にやられおって」


再び上空へ飛び上がったメーヴェは上からストロベリーのUFO に向かって

挑発した。


「出て来い!!淫乱ばばあ、次はあんたの番よ」


「やかましいわ・・・バカ天使が・・・」


「バカバカ言わないでくれる、バカストロベリー」


「やかましい、クソ天使」


「人のことをバカとかクソとか・・・もう許さないよ」


「バカだからバカで、クソだから・・・」


「私が行こう・・・」


そう言ってUFOから顔をのぞかせたのは緋色の傭兵「カオス」だった。

カオスはUFOの金属の外壁をなんなく通り抜けて船外へ出た。


「そこの女・・・私がお相手しよう」


「どなた?・・・新顔さん?」


「私の名はカオス・・・」


「カオス?・・・知らないね、宇宙は広いからね」

「私が知らないくらいだから、あんたたいしたことないんでしょ?」


するとカオスが言った。


「たった今から私の名前はおまえにとって一生忘れ得ぬ名前になるだろう」


そう言うとカオスは、いきなりメーヴェに向かって飛んできた。

ふいをつかれたメーヴェはカオスの繰り出したパンチを避けきれずまともに

食らってビルのガラス窓まで吹っ飛ばされた。

ビルの窓は砕け散って建物にデカい穴が開いた。


「いった〜・・・」


吹っ飛ばされたメーヴェは、ムクムクと起き上がった。


「あんたカオスって言った?・・・いきなり卑怯だよ」


「ほう、私の攻撃を食らって生きてるとはな・・・」


「このくらいじゃ、私は倒せないね」


そこからメーヴェとカオスのバトルが始まった。

目にも留まらぬ攻防・・・たぶん下からその光景を見てた人は、ふたりの

動きが速すぎて、なにも見えなかっただろう。

ただぶつかり合う音と振動だけが周りに響いていた。


もちろんハジメにも、今メーヴェがどうなってるのか分からなかった。


「なんかめちゃ強うそうなヤツが出てきたけど、大丈夫かなメーヴェ」


今のところメーヴェとカオスのチカラは互角のようだった。

パンチやキックを繰り出しても勝負がつかなく拉致があかない状態だった。


「おまえ、なかなかやるな小娘」


「カオス・・・あんたもね・・・」


「このままの状態で戦っても終わりそうにないな・・・」

「では、そろそろ私の本当の姿を見せるとしよう」


「出し惜しみしてたわけ?、わ〜もったいつけて・・・」


メーヴェの言葉を無視してカオスは、気合を入れると一声咆哮を上げた。


「グウォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」


カオスは見る間に体が大きくなって、めいっぱいなマッチョになった。

緋色の肉体は見るからにギリシャ彫刻のように芸術的だった。

そして頭から前に向かって二本の角がニョキニョキ生えてきた。

顔も悪魔の形相・・・真っ黒い目玉は不気味に光っていた。


「わお〜、そんなことできちゃうんだ」


「パワーアップさせてもらった」


「めっちゃ強うそうじゃない・・・おしっこチビっちゃいそう」


「さあ、仕切り直しだ、小娘」


「楽しくなって来たじゃない?」

「小娘じゃなくてメーヴェって名前あるんだよ、覚えといてねカオス」


「行くぞ、メーヴェ」


そう言うとカオスは瞬時に消えた。


あまりのカオスの動きが早いためメーヴェにはカオスが見えなかった。

次々繰り出す攻撃にメーヴェはなすすべなくボコボコにされて

極め付きの一発を食らって地上のコンクリートまで飛ばされて土中にめり込んだ。


すごい勢いで落ちてきたメーヴェを見てハジメがびっくりして飛び出してきた。

ハジメはコンクリートに開いた穴を除くと大きな声で叫んだ。


「メ・メーヴェ〜・・・大丈夫か〜?・・・」


(なにが起きてるのか分かんないけど、死んじゃったりしてないよな)


すると穴から、ずず汚れたメーヴェが出てきた。

着てる服は案外丈夫にできてるんだろう、破けたり穴が開いたりはしてなかった。

それに、あれだけボコボコにされたのにメーヴェは平気な顔をしていた。


「メーヴェ?大丈夫?」


「大丈夫だよ・・・ちょっとびっくりしたけどね」

「まだ終わってないから・・・ハジメちゃんは被害が及ばないところに

隠れてて・・・また行ってくるから」


そう言て行こうとしたメーヴェにハジメは彼女のほっぺにキスした。


「おまじない・・・絶対勝てるように・・・あ、ほっぺはあとで消毒しといて」


「私が勝ってもハジメちゃんに怪我されたら負けちゃったことと同じだから」

「ちゃんと避難しててね」

「じゃ〜行って来る・・・絶対勝つから、安心して」


ハジメは俺の彼女はなんて強くて頼もしい天使なんだ、って思うと自然と

涙がこぼれた。


「俺は君になら尻にしかれてもいいよ」

「絶対勝って俺のところに帰ってきてくれよ負けるな!!俺のメーヴェ」


つづく。



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