第4話 美徳の神器

美徳の宝物殿内部



「えっ…」

第一声はそれだった。そこには白い無限に続いてるようにも見える世界があった。真っ白で でも暖かくて心が洗われてしまうようなそんな空間が。神々しいがまさに相応しい光景だった。


「あれ、神器はどこに?」



「ここだ、上にいる。」


「久しぶりの来客ね!」


「来すぎても怖いじゃろが。」


「へぇ~コレが今回の使徒なんだね!」


老若男女の声がする。ガヤガヤわちゃわちゃと

そこには、圧倒されるほどの神器達が浮いていた。そして、自分に視線が向いている。どの神器も白色で所々に金色のラインがあしらわれているのが特徴みたいだ。形状も様々で杖だったり槍だったり変わったものもある様だった。


「静かに。」  シーン


一際目立つ神器がたしなめた。

あの神器がまとめ役なのか。その神器は大きい盾型のようだ。


「すいません、うるさくて、今代の使徒よ、みな久しぶりではしゃいでまして、私は忍耐の美徳と申します。以後、お見知りおきよ。」


「ご丁寧にどうも、天野翔斗と申します、よろしくお願いします。」


忍耐の美徳さんいわく初代の使徒に自分が選ばれたらしく、戻ってきてからここのリーダーにされたらしい。苦労人の匂いがしてきた。同情します…


「皆、誰が選ばれるかソワソワしてるみたいですね。では、今代の使徒よ、どの神器に惹かれますかな?そこの上の螺旋階段からじっくり見てあげてください。」


どの神器達も美しくカッコ良い。神器達にはそれぞれオーラがあって綺麗なのだ。そんな中、しっくりくるものがないなあと思っていた頃、気づけば終盤に近づいてることに気づいた。その時、そっぽを向いているロングソードがいることに驚いた。どの神器も自分を見ていたのにこの神器だけは自分の方を見ないのだから。でも、惹かれてしまった。美しい澄んだ青色のオーラを揺らしその凛々しさに。というか、このロングソードどこかで…


「今代の使徒よ、そのものは正義の美徳を司る神器でございます。ただ、先の勇者に駆り出された時に少し…」


「私はもう嫌なのです!」


「このように病んでしまいまして」


思い出した!そうだ、美徳の勇者(ユーザー)が使っていたあの神器か。正義っていうと確か一定の条件の中で最強の神器って言ってたっけ。ただ、リスクが高いところもあるって聞いたな。(ゲーム内では追加された比較的新しい神器)自分は違う神器を使っていたから忘れてた。ちなみに地球にいた頃は勤勉を司る魔導書のような神器を使っていた。使い勝手が良くデメリットが少なかったからである。まぁ、突出したところがないと言ったらそれまでだが。


「あのこの子を選んでもいいですか?」


私がそう言ったとき、正義の美徳はなぜという表情をしているように見えた。


「なんでわざわざ私を選ぶんですか!理解できません。」


「あなたがいいからです。私はあなたなら一緒に居たいと思える。」


「正義の美徳よ、選ばれたのなら試練を開始しなさい。」


「嫌です!」


「女神様に逆らうのですか、せめて試練だけでもしなさい。」


「仕方がありません。不本意ですが…!今代の使徒よ正義の試練を開始します。」


すると、空間が歪み、風景が一瞬にして変わった。霧がかかったような幻を見せられてるような感じだ。ここはどこなのだろうか。


「なぜ、私を選んだのですか!私は、あなたを拒んだのに。一体、どういう意図があるんですか!最初に教えなさい!」


この空間での正義の美徳は、白いモヤで見えなかった。本当に不思議な空間だ。


「あぁ…、それはさ、君に惹かれてしまったのと安心したからなんだ。」


「は?」


「だって、君だけがそっぽを向き、悲しんでいた。それだけ前の所有者を思っていたからでしょう。だったら、安心できる。」


「っ別に、思ってなんか…いないんだから……

…じゃぁ…、貴方は己の正義を貫ぬくことできますか!?

できないでしょう!!あの人はそれで死んだ!死んだのよ、勝手に、あれだけ、言ったのにだよ、私と約束したのにさ。それが人の限界何だよ…」


「それは無理かな。だってさ、変わるから、人の思いは。みんなは正義をどう考えてるか知らないけど正義って使い勝手の良い武器みたい感じだと思うんだ。だけど私は違う。私は知った。正義って適応しながら貫く意思なんだってさ。」


「矛盾してるじゃないですか、もうさっさとやって終わって出てってください…私なんかはもういいんです。」


「正義って貫くだけじゃ駄目なんだよ、正義は人それぞれだし、押し付けたらそれはもはや正義とは言えない。合わせればいい、その時々で一番納得できる正義に。変えてしまえばいい。みんなが幸せになれるように。それでいいじゃないか?」


「…………」


この子はきっと怖くて、悲しいんだ。震えてる気がする。もし、また主が死んでしまったら、みんながいなくなってしまったらって…。




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