3 ジワるDAYS
さて、さっきからたびたび登場する、この「クソがっ!」という言葉、実はわたしの口癖なのだが、これについてもこんなエピソードがある。
わたし、ちくわこと竹和未来[みらい]は青梅街道77のメンバーの中ではおバカキャラとしてやらせてもらっています。自分ではバカだとは思ったことはないですが、各々にわかりやすいキャラ付けをした方が番組制作側がやりやすいということでおバカキャラになったのです。おバカキャラとはいいますが、本当のバカには務まりません。なぜなら、アイドルグループに入る女の子など大半がバカを通り越してマジモンのヤバイやつばかりだからです。ロケ中にテンパり出して、「おかーさーん!!」といきなり叫んだと思ったら現場から逃げ出して失踪する子(わたしが探しに行かされる羽目になった)、メンタルが弱すぎてちょっと強く指摘受けたら、隠し持ったカッターナイフで、リスカをおっ始める子(結局公私ともどもわたしが世話する羽目になった)、なんでもいいからとにかく男と繋がってないとおかしくなる子(なぜかその子のクレーム担当窓口がわたしになっている)、こいつら行動はハチャメチャなくせに顔は揃いも揃ってわたしより可愛いから困ったもんだ。まあ、喰うか喰われるかのアイドル業界、心が擦り減るのも当たり前、ギリギリの精神状況になるのも仕方ない。
「敵を騙すならまず味方から、っていうしね!そんなわけで、あなたは周りのみんなを安心させるためにおバカキャラでいてほしいんだ。これは大変なことだよ。本当のおバカには務まらない。逆に誰よりも頭が良いくらいじゃないといけない」
グループ結成した当初に、自身もかつてアイドルだったプロデューサーが私に言った言葉がこうだ。憧れだったアイドルにうまく乗せられた形になったわけだが、実際やってみると、おバカキャラ、まじ大変っすよ?
「……ったく、クソがっ!」
いつものように周りのメンバーたちに振り回されて、ひとりごちていたわたしを見て、ホルモンバランスの池田はこう言った。
「おまえ、いつもクソがクソが言ってんなー。それ、いっそネタとして昇華したほうがええんちゃう?おれが番組ん中で、ネタを伝授するって形にしてやっから。普段のゆるいバカキャラとのギャップで、絶対ハネると思うねん」
はたして、なにをやっても失敗するというお約束のロケの最後に半泣きで「クソがっ!」と叫ぶわたしは池田の思惑通りに大ウケし、この切り抜き動画もバズりまくって、わたしの名前を検索すると「竹和未来 ちくわ」「竹和未来 クソ」と表示されるくらいである。喜んでいいのだろうか……
まあ、これでアイドルとしての立ち位置はすっかり確立したわたし。ホルモンバランスの池田には、抱かれても仕方ないくらいに思って覚悟を決めていたのだが、そんな誘いが来ることは一才なかったのだった。クソがっ!
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