021.ダンジョンの仕組み
「え? どうして?」
ウェルのダンジョンを改変できなくなったという言葉に少し焦る。もしかしてわたしが余計なことを言ったから? 家が欲しいなんて欲張ったからダンジョンを改変できなくなってしまったの?
「そんな顔しなくてもまた使えるようになるよ。原因はわかったからね」
「よかった。わたしのせいで改変できなくなったのかと思ったから」
「リーナリアのせいじゃないさ。あーだけどリーナリアにも手伝ってもらおうかな?」
「手伝い? 何をすればいいの?」
「とりあえずこの結晶に手をかざしてくれる?」
「わかった! こう?」
「ミリスもやる!」
ウェルに言われたとおりダンジョンに取り付けられている結晶に手をかざす。すると結晶の輝きが少しだけ増したような気がした。だけどそれ以外には特に変わったことはない。
「やっぱり。リーナリアが手をかざしたことで魔力が吸収されるスピードが早まってるね。これですぐに家を造ることができそうだ」
わたしの隣で同じように手をかざしているウェルが一人でわかったように頷いている。
「一人で納得してないでそろそろ教えて欲しいんだけど」
「ごめんごめん。説明するとね——」
ウェルによると、ダンジョンを改変するにはDPというものが必要になるらしい。
DPとはダンジョンポイントの略で、ダンジョンの守護者はこのポイントを使うことでダンジョンに物を置いたり、ダンジョンを拡張したり、他にもダンジョンに関わるいろいろなことができるみたい。逆にいうとこのポイントがないと何もできないってこと。
そして今はDPが枯渇しているから家を造ろうとしても造れなかったということみたい。
では、DPを得るためにはどうすればいいのか。それはダンジョン内にいる人間やモンスターから魔力を吸収する必要があるらしい。
吸収の方法には2つあって、1つはダンジョン内に人がいるだけで魔力を吸収している。この吸収方法はダンジョンの中にいるだけでいいのでお手軽だけど、その分、吸収量は少量。通常の人からだったら一日に1ポイント手に入ればいい方みたい。
そしてもう1つの方法はダンジョンの中で殺害する方法でも魔力は手に入る。この場合、殺害された人が内包する魔力を全て吸収することができるため、かなり多くのDPを取得できる。
ちなみにダンジョンの結晶(ダンジョンコアと言うらしい)からはモンスターも作ることができるみたいなんだけど、その作ったモンスターからは魔力を吸収することはできないみたい。
「それで、なんでダンジョンコアに手をかざさせたの?」
「ダンジョンコアに近い方が魔力が吸収しやすいと思ってね? 狙いどおりDPの増えるスピードがかなり上がったから、僕の考えは正しかったみたいだ。すでに1000ポイントを超えてるからね」
「それがどれくらいのポイントかわからないけど……」
「普通は1日で1ポイントくらいしか入らないことを考えると破格だよね。もちろんリーナリアの魔力が常人とは比較にならないくらい多いのも理由になってると思うけど。少なくとも家を建てるには十分なポイントだね」
「家を造れるってこと? なら早速造ってみてよ」
「それでもいいんだけど、その前に言っておいた方がよさそうなことがあるんだよね」
「何? 家を造るよりも大切なことなの?」
「うん。多分聞かないとリーナリアは後悔するんじゃないかな?」
後悔する。その言葉にわたしはウェルの話を聞くことにした。
「まず、僕がダンジョンの守護者になったことでダンジョンが初期化したらしい」
「初期化?」
「うん。このダンジョンは前の守護者がカスタマイズしていた物なんだけどそのカスタマイズが全てなくなったってことだね」
なるほど?
「わかってなさそうだから端的にいうと僕の支配の及ぶダンジョンはこの部屋から廃棄口があった場所までの範囲で、他のダンジョンだった部分は野放しになってるみたいなんだ」
「そうなの? ……それって大丈夫?」
野放しになってるってことはモンスターたちは今も自由に動き回ってるってことだよね? それって危険なんじゃ?
「ここにもモンスターが押し寄せてくる可能性があるね」
「危ないじゃない!」
「その時は僕が倒すから大丈夫さ。それでここからが本題なんだけど」
「まだあるの!?」
「僕の支配が及ぶ範囲はここから廃棄口までだって言ったよね? それで、支配してる範囲の状況はダンジョンコアを通じて見ることができるんだけど」
ウェルがダンジョンの状況を把握できてその範囲がここから廃棄口まで? ……もしかして。
「気がついたみたいだね。また廃棄者が捨てられて、モンスターに襲われそうになってるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます