030.聖女、盗賊団を壊滅させる①
私たちは受付嬢さんに案内された通り掲示板の前にやってきました。
掲示板には薬草採集や村の防衛、迷子猫の捜索や遺跡の調査などいろいろな依頼が溢れています。
「どの依頼がいいですかね?」
「わたくしにはわからないわ。主様が選んで」
「マスターの選択に従います」
そんな事言われても私も初めての依頼選びですからね。良い依頼の選び方なんてわかりません。
「これなんてどうでしょうか?」
指差したのは「盗賊団討伐」の依頼です。
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内容:盗賊団討伐
目的:王都周辺に根城を持つ盗賊団『黒牙』の討伐
報酬:50000ゴルド
条件:Cランク以上の冒険者パーティ
備考:生死不問
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「盗賊団の討伐依頼ね。報酬は良くなさそうだけどわたくしたちには関係ないものね。いいんじゃないかしら」
「それではこれにしま……」
「聖女様、その依頼はやめたほうがいい。レッドリストだからな」
受ける依頼が決まりかけたところで中堅冒険者らしき人が声をかけてきました。
「レッドリスト、ですか?」
「ああ、塩漬け依頼、いわゆる割に合わない依頼のことを俺たちはそう呼んでるんだがな。この依頼は依頼内容に対して報酬が少なすぎるんだよ。普通の相場の10分の1くらいしか報酬がねえからな。それに『黒牙』は元Bランクの冒険者を傭兵に雇っているという噂まで出てきている。つまりは命と金を天秤にかけた時にこの依頼は割に合わないものだってことだ」
「そうなんですね! 教えていただきありがとうございます! リリス、マキア。それではこの依頼を受けに行きますよ!」
「おいおい。話聞いてたのか? その依頼はやめたほうがいいって話をしたんだが?」
私は頭を横に倒して考えました。つまりはこの依頼は報酬が少なくて誰も受けたがらない依頼だという事ですよね? つまり、それだけ困っている人が多くなる依頼だという事で、つまりはこの依頼は解決すれば善行ポイントが溜まりやすい依頼だということになります。そう考えるとこの依頼は私たちにとって条件のいい依頼だと考えることができますよね。うん。やっぱり再度考えても止める理由は思いつかないですね。
「忠告ありがとうございます。ですがこの依頼が達成されずに困っている人がいるのは見過ごせません。私たちはこのような依頼を解決するために冒険者になったのですから」
リリスが横で微妙な顔をしているのが見えます。ですが私は思っていることを言葉にしているだけですよ? まあ全てを話しているわけではないですけどね。
「そうか……。さすがは聖女様だな。なら止めはしないが……。俺は忠告したからな。怪我するなよ?」
「大丈夫です! 心配してくださりありがとうございます!」
冒険者の男性が元の席に戻っていくのを片目に私たちは受付嬢さんの元に向かいました。
◇◇◇
「リリス。どうですか? 盗賊団の根城がありそうな場所は見つけられそうですか?」
私たちは依頼を受理してもらった後、人気の少ない場所でリリスにソナーを使ってもらい、盗賊達がいるところを探ってもらっています。
「多分だけどわかったわ。王都から少し離れたところに根城を作ってるみたいね。わたくしの瞬間移動も射程圏内よ」
「さすがリリスです!」
「お世辞はいいわ。2人とも準備ができたらわたくしにつかまって?」
言われるがままにリリスの肩に手を置くと、次の瞬間、私たちは鬱蒼とした森の中に立っていました。木々を隔てた奥には、古びた石造りの建物がそびえていて二人の見張りが立っているのが見えます。
「どう? 完璧でしょ?」と言いたげに胸をはるリリスを撫でながら作戦を考えます。
彼らの話を聞いていると、少し前に襲ったという商人達の話をしているみたいです。つまりこの盗賊達は黒。倒してしまっても大丈夫ということですね。
「見張りに気が付かれる前に倒してしまいたいですね。マキア。
「申し訳ありません。マスター。
そうでした。
「それでいきましょう」
「了解しました。
マキアが魔法を唱えた瞬間、時間の流れが遅くなったのが感じられます。まるですべての感覚が研ぎ澄まされたようです。これが
「弱すぎるわね。マキアの魔法を使うまでもなかったんじゃないかしら」
「リリスに肯定。魔法を使用することなく鎮圧できたであろうと推測します」
いつの間にか見張りを倒し終えたリリスとマキアに指摘されましたが、万が一がありますからね。安全第一でいきましょう。
「ではこのまま内部に進みましょう。リリスは敵の位置を確認。マキアはリリスから位置情報を聞いたら
「わかったわ」
「了解しました」
根城の中に入った後も音もなく盗賊達を屠っていくリリスとマキア。分かれ道にいる数人の盗賊達を一瞬のうちに無力化する手際はまるで暗殺者のようです。
逆に私はただついていくだけになってますね。お荷物感がすごいです。
「この先が溜まり場みたいね。中には三十人はいるかしら。一人だけ魔力量が多い個体がいるからそいつがリーダーかもね」
「わかりました。マキアは
「完了しました」
「奇襲をしかけます! 行きますよ」
私が勢いよく扉を開けると、盗賊たちが慌てて武器を構え、こちらに向かってきます。ですがその動きは緩慢。中にはリーダーらしき男の姿もありますが、動きが遅すぎて怖さは微塵も湧いてきません。
「何 者 だ ! 貴 様 ら、こ こ を 荒 ら し に 来 た の か ! こ こ が 『黒 牙』 の ア ジ ト だ と 知 っ て の 狼 藉 か?」
リーダーの緩慢な怒声が響く中、リリスが軽く肩をすくめました。
「何言ってるのかわからないわよ! もう少しはっきり喋りなさい! いえやっぱり喋らなくていいわ。少し黙っていなさい」
リリスが指を鳴らすと、盗賊たちの足元から無数の影の触手が飛び出しました。それらは一瞬で盗賊たちを絡め取り、彼らの動きを封じます。
動きを封じられた盗賊達にマキアはその手に持つ剣を使って次々と峰打ちをきめていきました。
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