020.聖女、スラム街を救う①
私たちはリリスに連れられてスラム街に到着しました。アティリウスはその初老の姿に似合わずリリスの飛行に余裕でついてきて、今も息を切らさずに立っています。
私ではまねできませんね。どのような脚力と肺活量をしているのでしょうか。やはりガチャユニットは規格外なキャラばかりです。
「お嬢様。まずは何を致しましょうか?」
夕日に染まりかけた空を見上げながらアティリウスが言いました。
スラム街は一度も来たことがありませんでしたが、瓦礫やゴミがそこかしこに散乱した、荒れ果てた環境が広がっています。建物は粗末で、廃材や古い鉄板などで組み立てられた家々がぎっしりと詰まっていました。
そこにいる人たちは拙い足取りで歩いていたり、はたまた地べたに座り込んで踞っていたり、全体的に活力がない雰囲気です。
「まずは、炊き出しをしたいと思うのですが」
「ふーん、さっきガチャで出たアイテムを使うつもりなのね?」
「はい。このアイテムですね」
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・炊き出しご飯 x 1000(R)
お米と少しの野菜、豆類を煮込んで作った温かいご飯。体力が少し回復する以外に特殊な効果はないが量が多いため大勢に振る舞うときに重宝される。
・炊き出しスープ x 1000(R)
野菜やハーブをじっくり煮込んで作られた優しい味わいのスープ。魔力が少し回復する以外に特殊な効果はないが量が多いため大勢に振る舞うときに重宝される。
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「量が足りるかどうかが心配ですが」
「おそらく大丈夫でしょう。幸い王都の貧民街はそこまで大きくない様子。1000人分のご飯とスープがあれば十分だと思います。足りなければ私めが作れば良いですしな。それより住民達をどうやって集めるかが問題ですぞ」
「そうね。歩けそうな人はここまできてもらうとして、歩けないくらいに弱ってる人は来てもらうのも酷よね」
「それなら私が
「なるほど、それなら大丈夫そうですな。住民集めはお任せしますぞ。それと私めに〈異次元ハウス〉を預けていただけると助かりますな」
「〈異次元ハウス〉ですか?」
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・異次元ハウス(UR)
外見はごく普通のちょっと大きな家だが、その扉を開けた瞬間、常識を超えた空間が広がる。内部は異次元とつながっており、どれだけ物を置いても空間が埋まることはない。広大な居住スペースや倉庫、さらにはトレーニングルームや庭園まで思いのままに設計可能。持ち主の意志に応じて内部構造が変化させることができる。またハウス内には食料が蓄えられており、日が跨ぐごとに最大1000食分の食料が補充される。
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「炊き出しを〈異次元ハウス〉の中でやるつもりなのね?」
「そうでございます。私めは家の中であれば
アティリウスの召喚能力を発揮するには確かに家を用いるのがいいでしょうね。
「わかりました。アティリウスに〈異次元ハウス〉を託しますね。他に何か必要なものはありますか?」
「応急治療セットを渡しておけばいいんじゃないかしら。怪我人が来る可能性もあるし」
「そうですな。あとは必要のないポーション類も預けていただけるとなお良いですぞ」
2人に言われたものをウィンドウからカード化して、アティリウスに渡します。
「それでは行ってきますね? リリスはどうしますか?」
「わたくしは主様について行くに決まってるじゃない。ここはスラムなのよ? 主様が襲われでもしたら誰が守ると思ってるのかしら」
私は一人でも大丈夫だと思うのですが、リリスは心配性ですね。
「お嬢様、リリス。行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
アティリウスに見送られて私とリリスはスラム街の人たちに声をかけるべく歩きだしたのでした。
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