009.聖女、スタンピードに巻き込まれる?②
ニヤリと笑ったリリスに嫌な予感がしましたが、言われるがままにリリスをおんぶするとリリスの小さな双丘が私の背中に押し付けられました。リリスのあたたかい体温が私を包むようにガシッと体を掴んできます。
む。もしや、私よりありますね。ぺたんこ聖女と言われた私ですがこんな幼女にも負けるとは。
……今はそのことは置いておくとしましょう。
先ほども言ったようにリリスが背中からガシッと私の体を掴んできます。何をする気でしょう? やっぱり嫌な予感がします。
「じゃ、さっさと行くわよ。噛まないように口を閉じておいてね。主様」
「口を閉じ」
る?
そういうか言わないかのところで。
ビューン!!
「きゃあああああああああ!!」
私の体が勢いよく宙に浮かびました!!いえ、浮かび上がったと言うのは誤解を与えそうなので訂正すると、ぶっ飛びました!! ジェットコースターもかくやと言う勢いで私の体が浮かび上がります!! わたしジェットコースター乗ったことないんですけどね!!
「り、リリス!! 止まってください!!」
「何よ。もう根をあげたの? わかったわ。止まるわね」
そういうと急停止。
「急に止まらないでください!!」
「止まれと言ったり止まるなと言ったり注文が多いわね。じゃあ進むわよ」
「ゆっくり。ゆっくりでお願いします」
「本当に注文が多い主様。困ってしまうわ」
リリスのにやけた顔が頭に浮かびます。絶対この状況を楽しんでいます。というか言うことを聞くんじゃなかったんですか!?
「言うことは聞いてるじゃない」
「心を読めるんですか!」
「読めないわよ。主様がわかりやすすぎるだけ。それよりもこのくらいのスピードでいいのかしら。もう少しスピードを緩める?」
「……大丈夫です」
「そう。ならこのまま〈銀狼の迷域〉まで行くわね」
リリスのからかいは終わったのか私でもなんとか大丈夫なスピードに抑えてくれました。
風の中で揺れる髪とともに冷たい空気を感じながら、景色がすばやく切り替わっていきます。途中でウルフの群れらしきものが王都に向かっていっているのも散見されますね。やはり急いでスタンピードを止める必要がありそうです。
それにしてもリリスの飛行は馬車くらべものにならないくらい早いです。これならダンジョンまで数時間ほどでたどり着くでしょう。
「主様。今のうちにガチャを引いておいてね?」
「ガチャを?」
「そう。ダンジョンは何があるかわからないもの。多分大丈夫だとは思うけど、流石に弱体化したわたくしだけで主様を守れるかはちょっと不安だわ。それに便利なものが出るかもしれないし」
「でも、ガチャって運なんですよね? 都合よく使えるものが出るとは限らないのでは?」
ガチャとは何が出るかわからない。そのワクワク感がたまらないのです。まだ1回しか引いたことはありませんが。……やっぱりガチャスキルに思考誘導されてる気がします。もっと理性を効かせる方がいいかもしれません。
「それならそれでいいのよ。やれることはやったと言い切れることが大事なの。それにガチャは運命を呼び寄せてくれるから、必要なものを出してくれると思うわ」
「そういうものですか」
リリスに諭されて「ガチャ・オープン」と唱えました。片手で収まるウインドウが私たちを追従して表示されます。
この画面も不思議だなーと思いながら善行ポイントに目を移します。ポイントは1100ポイント。11連一回分と1連一回分です。
いまだにガチャ衝動は私の中で蠢いています。自分のものでありながら自分のものではない感情を持つ感覚はいまだ慣れませんが不快な気持ちではありません。それがガチャスキルの狙いかもしれない考えると少し怖く感じなくもないですが、身を委ねてしまった方が楽になれるという欲に負けそうになります。
そんな感情と戦いながら私は11連のボタンを押しました。「良いものをください」と念じながら。
ガチャ画面では11枚のカードがくるくると回り、カードの色が青から赤、赤から銀、そして銀から金に忙しなく変わっていきます。
金ですか。URが確定ですね。ちっ。流石にLRは出ませんか。……流石にLR連続は欲をかきすぎですかね。
────────────────────
・ガチャ収納(UR)
・トレーサー・トレーラー(UR)
・えりくさ(SR)
・マジックブーストリング(R)
・激うまフード(R)
・マナポーション x 10(R)
・幸運の硬貨(R)
・笑い袋(N)
・50000ゴルド(N)
・50000ゴルド(N)
・硬い石(N)
────────────────────
ガチャの結果が確定したみたいです。どれも聞いたことのないアイテムですね。50000ゴルドだけは通貨なのでわかりますが。
ピロン!
────────────────────
ミッション1、〈ガチャ〉でアイテムを獲得しました。〈善行ポイント〉を100ポイント付与します。
────────────────────
ミッションを達成したみたいです。100ポイント獲得したのは大きいですね。
ピロン!
ふむ? さらにアナウンスがありますね。
────────────────────
〈ガチャ収納〉を使用しますか? <YES/NO> 使用するとガチャで引いたカードをウインドウ画面上で保管できるように拡張します。引いたカードの詳細を確認できるようになり、カードから実体化したものを再カード化することが可能になります。また、50000ゴルドを払うことでカードから実体化したものでない物体をカード化できます。
────────────────────
「なるほど〈ガチャ収納〉ね。いいものを引いたわね」
「わかるんですか?」
「ええ、ガチャの結果をカードとして持ち歩く必要がなくなって好きな時にウィンドウ上で使えるわ。あとはカードからではわからない詳細を確認できるようになるし、お金を払う必要はあるけどガチャアイテム以外のものをカード化することでウインドウ上で保管できるようになるから、擬似的なアイテムボックスとしても使えるわね」
私の顔の横からリリスが顔を出してカードの説明をしています。……説明はありがたいんですけど、今、飛行中ですよね……。安全運転でお願いしたいのですが。
でも確かに毎回ガチャを引いた時にカードを持ち歩くのは不便ですよね。とりあえず、ガチャ収納を使ってみることにします。
────────────────────
〈ガチャ収納〉の使用を確認しました。ガチャから出た結果は収納ウィンドウからいつでも取り出せます。
────────────────────
するとウインドウが更新されてカードの一覧が表示されました。
なるほど。こうなるわけですね。カードの詳細はどう……。
「とりあえず戦闘に使えそうなアイテムはマジックブーストリングくらいかしら? そのリングは主様にあとでつけてもらうとして、とりあえず急ぐわね!」
「えっ。きゃあああああああああ!!!」
なんで飛ぶスピード上げてるんですか!! 言うことを聞くって言ったじゃないですか〜!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます