006.聖女、王女を助ける
「
「「ギャン!!」」
私は結界魔法を馬車の周囲に展開しました。展開された光の壁に阻まれるように狼型の魔物、フォレストウルフたちが弾かれて唸り声をあげます。
「これはなんだ!!」
「!! 対魔結界か!?」
「どちらにせよ助かった!! 皆、体勢を立て直せ!!」
フォレストウルフが結界の警戒するように取り囲んでいるのを見据えながら私とリリスは馬車の方へと急ぎ近づいていきます。
「援護します!!」
「助かる!!」
「リリス!!」
「いつでもいけるわ!!」
リリスがフォレストウルフの群れに闇属性の魔法弾を撃ち放ちます。フォレストウルフは魔法の弾幕をくらい次々に体に風穴を開けて倒れていきます。
「リリスは大丈夫そうですね。
リリスが優勢なことを確認すると怪我人に向けて回復魔法を発動します。複数人怪我しているため応急処置として範囲回復魔法を使いましたが、怪我がひどい人に対してはさらに
そうこうしているうちにリリスが戻ってきました。
「こっちは終わったわ」
「お疲れ様です。こちらももう少しで終わります」
「別に完治させる必要はないんじゃないかしら?」
「面倒を見るなら最後まで、ですよ」
「そういうものかしら?」
それらしいことをリリスに説法します。それに完治させたほうがポイントも多く貯まりそうですしね。
「聖女様! 助けていただきありがとうございます!」
「何事もなさそうでよかったです」
馬車は少し壊れていますが動かせない程ではなく、また、人的被害はなかったようにみえます。
改めて馬車をよく見ると、外装は深いロイヤルブルーで彩られており、太陽の光を受けて金の装飾が美しく輝いています。そして何よりエルダリオン王国を象徴する羽根の紋章が車体に大きく描かれていました。
ということは王族の馬車でしょうか? それにしては馬車の護衛が少ないように見えますが?
「セラフィナ様!! ありがとうございますわ!!」
私が思案していると馬車から一人の少女が飛び出してきました。一見しただけで高級とわかるドレスに皺が入るのも構わず私に抱きついてきます。
「やはり。姫様でしたか」
「嫌です! アメリアとお呼びくださいと言ったはずですわ!」
エルダリオン王国の第二王女であるアメリア様が私に名前呼びを強要してきます。
「姫様。今はそれどころではありませんぞ。早く逃げませんと」
「そうでした! セラフィナ様も一緒に早く逃げましょう」
騎士の一人に諭されるように王女は馬車の中へ入り、私をなかへと誘います。
「私は乗りませんよ。それより何かあったのですか? フォレストウルフは全て倒したと思いますが?」
「それは私から話しましょう。進みながらでいいでしょうか」
先ほどの騎士が言うにはエルダウルフが森に現れたようでした。エルダウルフはフォレストウルフの上位種で、森の精霊の力を宿した存在です。その脅威度は高く、王国の騎士50人で倒せるかどうか。
「今は他の護衛たちが足止めをしてくれていますがそれもいつまで持つか……」
「なるほど。では急いで逃げましょ……」
「アウォーーン!!」
「くそ! もう追ってきたか!」
後ろを見ると巨大な狼の魔物、エルダウルフがこちらに向かって走ってくるのがわかりました。すでに目をつけられているようです。
「止まりましょう。エルダウルフが相手ではすぐに追いつかれます。迎え撃った方がマシです。リリス!」
「わかってるわ」
リリスが魔法弾を撃ち放ちます。エルダウルフはそれをみて一声唸りを上げると、地面から無数の根が勢いよく飛び出し、リリスに向かって襲いかかりました。それらの根は鋭く鋭利で魔法弾を撃ち払いながらリリスの動きを封じようとします。
「その程度?」
リリスは怪しげな笑みを浮かべながら手を掲げて闇の魔力を凝縮します。彼女の周囲に黒紫の炎が浮かび上がり、一瞬で根を焼き尽くしました。
「地獄の業火を味わうがいいわ」
リリスはそう言葉を放つと黒紫の炎をエルダウルフに向かって放ちました。炎は急速にエルダウルフに迫りその巨体を飲み込もうとします。しかし、エルダウルフは森を操るかのように周囲の根を盾にして攻撃を受けとめました。木々が燃え尽きる合間にエルダウルフは再び魔力を集中させ、無数の木の葉を刃のように変えリリスに向かって降り注がせます。
「
リリスの周りにバリアを展開しました。無数の木の葉は障壁に阻まれて消滅していきます。
「主様。そのままバリアを張っていて」
そういうとリリスは魔力の集中を始めます。エルダウルフの周りには森の精霊たちと共鳴したように緑色のオーラが漂い、足元から生い茂る木々は巨大な枝や鋭い蔦に変わり、リリスの周囲を取り囲んでバリアを完全に飲み込みました。
「これでおしまいよ。滅びの隕石よ、降り注げ!」
エルダウルフの頭上上空に巨大な門が開かれ赤々と燃える隕石が出現します。それはエルダウルフめがけて猛烈な勢いで落ちていきました。エルダウルフは体を守るように巨大な木のシールドを作り出しましたがリリスの召喚した隕石の力は圧倒的です。
地面が揺れ、激しい爆風があたり全体を飲み込みました。衝撃波が周囲に広がり、木々が揺さぶられ、地面が割れるような音が響き渡ります。隕石の衝撃により、エルダウルフの姿は跡形もなくなり、その後あたりが静寂に包まれました。
「やっぱり弱体化してるわね」
「それで、ですか?」
「ああ、主様。わたくしの活躍はどうだったかしら?」
「すごいですけど。召喚魔法は封印ですね」
「なんでかしら!?」
明らかにオーバーキルだからですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます