青春コンプレックス

さよなら青春

青春コンプレックス

初恋のひとが産まれた街にいて何ひとつ分からなかった青春


君がつく四月の嘘に騙されたフリをしていた桜は散った


学校に来なくなった少女もいて 五月の風は青葉の匂い


文庫本借りたままでは君のことしか分からないから雨が降る


親友が代わりに泣いてくれたこと 六月の雨は綺麗だ


教室に入れなかった七月の蝉の寿命は戦争に似て


放課後のピアノは間違っていい 不器用な僕の愛の挨拶


八月の最終日には友の声聞いて無理やり眠りについた


イヤホンでかき消してしまう九月の忘れ音、苦しいことばかりで


屋上で流す涙はシャボン色 空との距離を測れなくなる


十月の君と覗いた望遠鏡 満月だけが全てではない


教室に君の姿はもうなくて十一月の空が遠ざかる


午後の数学 僕らまだ方程式じゃ解けない恋をしていよう


十二月の実力テスト 雪原の果てまでずっと息ができない


一月のため息は雪 学校に行けない朝の雪崩る気持ち


図書室で声を殺して泣いていた先輩は今──元気でいますか


二月の恋を忘れたい 渡せなかったチョコレートはどろどろで


三月の卒業式に君はいなくて 過ごした日々は幻めいて


透明な学級日誌 僕たちは過ごした日々を思い出せない


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