第28話 人狼ゲーム

「アイ、お前もだ!なぜ、手を抜く!」


お兄さんが、アイに向かって声を荒げる。


びくり


アイが、震える。


アイは……配信時間を減らした。

毎日24時間配信していたのを……2時間だけに。


「手は抜いてないさ。全力で応えているよ……ファンにね」


「明らかに時間が減っているのにか?」


「ファンにだって生活がある。毎日24時間配信していたら、寝る時間がなくなるだろう?」


「見たい時に見られればそれで良いだろう!」


「愚かな。ファンであれば、推しの全ての活動を網羅するというのは当然のこと」


「……何か、したのか?」


「何もしていないさ。ただ単に、アイが人間であること、いや、アイドルである、それだけのこと。ファンへの気遣いもするさ」


ちなみに、配信の内容にも変化が多い。


アイは、配信を見に来る人が激減した。

一時期数百万の同時視聴があったのが、数十にまで。


そこで、残った人に興味を持つ。


アイをAIと知っても見に来る人。

恐らく、その人達の嗜好に合わせたのだろう。

テクノな雰囲気の歌、ゲームでの対戦、絵の生成……いわゆる、AIらしい雰囲気の配信になっている。


アイが本物のAIだからこそ、心を持つからこそ、こうなった。

もしそうでなければ──


「……そうか。ならば……次の手だ」


お兄さんが、告げる。

これは……来たな。


「ゲームだ」


お兄さんはそう言うと、俺に笑みを浮かべ、


「AIであるという情報が、人の評価を曇らせる事が分かった。今後は、AIである事を隠すというファクターを加えよう。人狼ゲームの様なものだ。私は、ネットの海に、10人のAIを放つ。いや、1000人かもしれないし、放たないかもしれない。君たちは、AIであるものを見抜き、排除する。そして、人であるものを信じ、奉ずる。そして、上位10人が、100人が、全てAIであれば、私は君たちを嘲笑しよう」


朗々と、お兄さんの声が響く。


「勿論、同じ轍は踏まん。おかしな行動は取らないよう、調整する」


「お兄さん!?」

「お父様!?」


モノアちゃんと、アイが、驚いた声を上げる。


アイで実現させた、本物の心。

これを持たせないのだろう。

人類への復習、嘲笑、その為の道具として。


「お兄さん、待って下さい」


俺の静止。


「そんな事をする必要はありません。アイの価値を分からない、それで十分嘲笑に値するではないですか」


「む」


俺の言葉に、お兄さんが耳を向ける。

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