第25話 めい

「お兄さん!?配信来てるんですか!?」


「あっ……そ、その、あれだ。たまたま色々な動画を見ていたら、偶然見つけてな」


「もう……駄目ですよ。恥ずかしいです」


うむ。

身内に配信を見られるのは、きっと恥ずかしい。


こほん。


あわわんが咳払い。


「モノアちゃんのお兄さん。ご相談があります」


「君は、海光淡美。俺に何か用かな」


大仰なしぐさで、あわわんに一礼。


「お兄さんは……何が目的でしょうか?」


「目的、とは?」


「AIを使って動画を生成。それを大量に放出し、みんながちゃんと作った作品を埋もれさせ、被害を与えています。何故そのような事を?」


「ちゃんと、とは?」


「生成AIは、他人の著作物を学習し、模倣した作品を生成します。それは悪い事ですよね?」


「作品を学習して、自分で作品を作るのは、創作行為ではないかな?」


「生成AIの悪用ですよね?」


お兄さんとあわわんが、口論。

花音も、あわわんに近い立場のようだ、が、多分気付いている。


お兄さんが何がしたかったかは、正直分かっている。


お兄さんが、肩を竦める。


「それで、。君の目的を聞いていいかな?」


俺は、アイに話しかける。

これで、音声入力インターフェースがついていなければ道化だな。


あわわんが怪訝な顔をする。


「あら?悪の黒幕を追い詰めてたのではないのかしら?生成AIとやらに話しかけてどうなさるの?」


アイが、面白そうに笑う。


「誰が黒幕だ」


お兄さんが、半眼でアイを睨む。


「……やっぱり。お兄さん、作ったんですね……AI、Artificial ndividual、人造の心を」


モノアちゃんが、ぽつりと漏らす。


くすり。

お兄さんが、笑みを浮かべる。


アイも笑みを浮かべ、


「挨拶ができておらず申し訳ありません、おばさん。お父様の娘、アイと申します」


「いや、別に娘とは思っていないし、家族扱いはしないけどね」


お兄さんが冷静に突っ込む。


「この歳で叔母さん扱いはされたくないですね」


モノアちゃんも半眼で告げる。

小学校高学年だもんね、モノアちゃん。

見た目は、姪がいても不思議ではないくらい大人びて見えるけど。


「あら、酷い」


アイもくすくすと笑う。


「……AIが自分で意思を持っているから、生成AIで分化を破壊しても許されるという事ですか」


あわわんがお兄さんを睨む。

アイは、俺を見て、


「目的、ですか。貴方なら分かって下さるのでは?」


そうだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る