第23話 残されたあわわん

「……なるほど」


あわわんが苦々しく言う。


「斬新な発想だが、それは有り得ない」


社長が首を振る。


「うちも、独自に調査を進める。何か分かったら教えて欲しい」


社長そう言うと、立ち上がり。


「規約。動画の投稿規約、それを確認したまえ」


そう告げ、帰っていった。

あわわんを残して。


「利用規約?」


モノアちゃんが小首を傾げ、スマホを取り出す。


「恐らく、動画投稿時のAI利用規定だと思う。AI利用の設定をする必要がある」


俺が答える。


ちなみに、タイトル付近にAI利用と表示される。

検索でデフォルトで除外設定有効。

音楽の一部、イラストの一部等、細かな設定も必要。


「規約違反?」


あわわんの問いに、


「意図的に隠したか、もしくは、AI生成動画という自覚が無いか、だな」


「自覚ですか?自分が使っているなら分かりますよね?」


花音さんが不思議そうに言う。


「自覚が無いと言ったのは、にだよ」


あわわんが、花音さんが、目を見開き、絶句する。


そう。


アイがAIで。

アイが、動画を生成して、アイが稿していたら。

自分の作品がAI利用であると認識するだろうか?


「……自我を持つAI、そんなのいくら何でも……」


あわわんが呟く。

それは、半ば自分自身を言いくるめる様に。


「言われてみれば、確かにそれしか無い気がしますね。つまりこれは、エンターテイメント文化に対する──」


花音が、真面目な声音で呟く。


「やめさせないと……でも、どうやってコンタクトを取れば……?」


あわわんが呻く。

いや、コンタクト取りたいなら、動画にコメントしても良いし、SNSで連絡すれば良いのでは。

通常であれば、膨大なコメントや連絡を捌く事はできないが、アイはAIだ。


「アイさんが、超常の技術で創られたAIなら、心当たりが有ります」


ぽつり


モノアちゃんが呟く。


「あるの!?」

「モノアさん、教えて!」


あわわんと花が詰め寄る。


「多分……お兄さんですね」


モノアちゃんが、困った様に告げた。

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「ずっと貴方だけを推し続けます」その言葉を信じても良いですか? 赤里キツネ @akasato_kitsune

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