第22話 亡霊

「何……だと……」


社長は、よろよろとCDをしまうと、


「ともかく。今回の事件は、鈴音愛華の亡霊、それが関与していると睨んでいる」


「愛華さん生きてますよね」

「流石に失礼だと思います」

「落ち着けよハゲ」

「それは違うと思います」


あわわん、花音さん、俺、モノアちゃんからツッコミ。


「亡霊の仕業、というのは、根拠があるのだよ。あと、はげてはおらん」


社長はそういうと、配信画面を印刷した紙を数枚取り出す。


「キャンプの回、映像がおかしかった奴だな」


見覚えがある。


「ふむ、流石だね。君も気づいていたか」


「それSNSで話題になってたシーンですよね」


俺を褒める社長を見て、モノアちゃんが小首を傾げる。


「この背景に映っている小屋……実は、10年も前に取り壊された物で、今は実在しない」


社長が語り、


「あとは、調理場やトイレが新しくなっているのに、古いままだったとか。連日人で賑わっている筈なのに、他の人が映っていないとか」


「動画内で使われた食材も、5年前の包装だったりしたそうですね」


俺、モノアちゃんが続ける。


「映ってはならない物が映っている……つまり、亡霊。Q.E.D.」


「いや、単純に生成した映像だからごちゃごちゃになっているだけだろ」


しん


静寂が支配する。

何故。


「……君は、CGと実写の区別がつかないのかね?」


社長が胡乱な目で尋ねる。


「つきませんね」


「君は、CGを過信しているようだ。流石に、現代の技術で、実写と区別がつかないような映像は作れない」


「ええ。アイは、数世代先の技術に思えますね。あれだけ間違いがない、かつ魅力的と感じられる動画を生成できるのですから。世に出ているAIの技術では不可能です」


「……どういう意味かね?」


社長以外は、既に気づいているようだ。


そう。


24時間、絶え間なく動画を作る。

そんな事は、不可能だ。

人間には、寝る時間が必要だ。


勿論、数名で交代制にすれば可能だ。

だが。


こう考えた方がしっくり来る。


超高性能なAIが、動画を生成し続けていると。


膨大な動画を学習し、人が魅力的と感じさせる正解を得る。

コメントを取り込めば、適切な反応も生成できる。

キャンプや廃墟探索の動画で、現実と齟齬が出るのは、古い映像も取り込んでいるせいだろう。

その気になれば正しい映像にもできる筈だが、おそらくその必要性を感じていないのでは。


つまり。

アイとは……超高性能のAI。

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