第19話 仮面の向こう

意味が分からない。

アーカイブを残さないのは、まあ、分からないでもないが。

動画投稿するには、アカウントが必要だ。

また、アカウントを登録してもらい、通知をオンにしてもらえば、ゲリラ配信でも通知が行く。

アカウントを毎回変える必然性はない。


それこそ、実は全部別人か──もしくは、本当に怪異現象か。


「他に何か共通点はあるのか?」


「そうだな。同じVNIが配信しているというのは共通しているな」


「何でだよ」


同じVNIの動画という共通点があるのであれば、同じ人が配信しているのだろう。

が、チャンネルが毎回変わる意味が分からない。


「あと、仮面をつけているな」


「バーチャルなんだよな!?」


VNIの顔を隠す意味は1ミリもない。

実写なら分からんでもないが。


……


異常に質が高い、仮面をつけている……


まさか。


「花形、他に情報はないか?」


「さてな……俺もまだ3回しか見た事がないからな」


「結構見てるじゃねえか」


都市伝説じゃねえのかよ。


「ああ、あとは。配信者──アイちゃんのスクショならあるぞ」


「あるのかよ」


いや。

もうそこまで来たら、ただのゲリラ配信の謎VNIだよね。

何かのプロモーションか?


花形からスクショを受け取る。

確かに、仮面をつけているな。


「動画を録画とかしたやつはいないのか?」


「録画した奴はいたが、持っているやつはいない」


「どういう事だ?」


「録画しないように、アイちゃんが注意するし……これは都市伝説レベルだが、録画した奴はスマホやパソコンが壊れたらしい」


「流石にそれは都市伝説だな」


まあ、配信が残らないような動画を私的とは言え録画するのは、普通に規約違反だしな。


ふむ。

チェックしてみるかな。


--


「愛華さんは関係ないですね」


あわわん──香織が、そう告げる。

同じ鈴音愛華ファンとして、聞いてみたのだが。


「俺もそう思った。質の高さは驚いたが──山籠り前の鈴音愛華との共通点はない」


仮面以外は。

仮面の形も違うけれど。

だが──。


「愛華さんのシンパの可能性、ですか?」


「ああ」


鈴音愛華は、山籠り前後で別人だ。

そんな都市伝説がある。


その都市伝説を盲信するファンがいて。

山籠り前の愛華が、正体を隠してVNIとしてデビュー、そんなシナリオを演じる。

それは……動機となるのではないだろうか。


「でも、愛華さんほど上手くはないですよね、歌」


「ああ」


「ええ、アイちゃん凄く上手いよ!?流石に美化し過ぎてない!?」


花音が慌てて遮る。

花音は、俺達と同じくらい前鈴音愛華のファンだと思っていたが……そうでもないのかも知れない。


「……愛華さん程上手くないのは確定的に明らかですが、それはそれとして──アイの配信は、私の事務所でも警戒感が出ています。明らかに、みんなの同接、登録者数の伸び、収益、が落ちています。アーカイブがないのが、せめてもの救いですね」


確かに。

アーカイブを見返す人が増えれば、真夜中の13時を避けても、配信に来る人が減少するだろう。


その日の夜。

真夜中の13時は。

14時も増えた。

そして──


*************************************************************


閲覧ありがとうございます。

閲覧、ブックマーク、応援、コメント、レビュー、励みになります。

lit link作りました。

https://lit.link/kitsuneteru

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る