本物のAI!
第18話 2種類の人間
世の中には、2種類の人間がいる。
既婚者と、非既婚者だ。
俺は少し前、既婚者になった。
何故か会長の援助もあり、結婚式も盛大に行われ。
妻の招待客が、何故か経営者だの大物女優だのが混ざっていて驚いたが。
それより驚いたのが、白江さん──いや、
勿論、花音の事は好感を持っていたし、美人だとは思っていたが。
知人全員から総ツッコミを受けてしまった。
どうやって知り合ったのかと。
昨日なんて、花音がテレビの取材を受けていたのだが。
美人すぎるデザイナーなんて見出しがついていた。
取材自体は、最近花音のデザインした服が、女優やVNIの間でトレンドになっているからだ。
なお、花音は、結婚の事に触れられると、一般の男性と結婚したと報告していた。
君も一般人だからね?
家庭のルール。
推し活に使う時間やお金は、制限する。
配信やアーカイブを見る時間は、1日に1時間まで。
推し活は、お小遣いの範囲で。
ただし、仮に長時間配信がある場合は、別途調整。
そして、残った余暇の時間は、花音と一緒にすごす時間にする。
……まあ、配信を見るのも付き合ってくれているのだけど。
「同時接続数10万……凄い数だな」
おすすめに、あわわんのライブ配信が載っている。
「この衣装、私がデザインしたものですね。好評頂いているようで、嬉しいです」
「うん、綺麗だと思うよ」
あわわんのイメージによく合う。
それでいて、真新しい印象を与える。
丁寧な仕事ぶりだ。
俺の推しはモノアちゃんで変わりないが。
あわわんの配信も、時々見るようになった。
やはり、センスがある。
歌も上手い。
正直、かなり面白い。
「これを見てから寝ようか」
「はい」
--
「おい、田中」
「どうした?」
同僚の花形が、話しかけてくる。
以前は将来が期待された、エリート社員だったが。
あの事件以来、ぱっとしない。
降格等はされていないが、周囲の目が生暖かい。
次期社長候補に対して冷たすぎないか。
ちなみに、あわわんのファンもやめたらしい。
風来坊。
「真夜中の13時って知っているか?」
「知らん」
まじで分からん。
映画かドラマか何かか?
でも、VNI狂いのこいつが、そんな話するか?
「深夜の13時、アーカイブが残らない謎のライブ配信があって……それを見たら、他の配信が全てゴミに思えてしまうらしい」
「……それは面白いという事か?チャンネルにいけば情報もあるだろうし、謎も何もないと思うが」
動画配信、というのは、チャンネルというアカウントで投稿される。
アーカイブが残らなければ、過去の配信を見ることはできないが。
チャンネル登録を行い、通知をオンにしておけば、見逃さずに見る事はできる。
誰が配信しているかの情報もある程度は得られるだろう。
都市伝説の様なトーンで語られても困る。
「チャンネルは毎回変わるんだ」
「何でだよ」
何でだよ。
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