第12話 みばれ

ぷち


通話を終わり、笑顔で、


「まったく、涼ちゃんはいつもそそっかしい──」


そこまで言って、笑顔のまま固まる。

なお、涼ちゃんというのは、モノアちゃんと親しいVNIだ。


うん。

もしかして。

この女の子……


「モノア……ちゃん……?」


「あらら、いえ、そのですね」


モノアちゃんが、誤魔化そうと、声を変える。

お姉さんの声に。

あれ、やはり、全部地声なのか。


「……歌うか」


今度は、配信のトークの時の声。


「歌って誤魔化せるのは、配信の時だけですね」


しかも歌枠配信限定。


「……この声です」


「はい、それがさっきの声ですね」


「良かった。この声は、配信で使わないようにとってある声なんです」


なるほど。

配信の声で普段喋る訳にいかないからか。


……そういうものなのか?


なるほど。

俺の事を知っていたのも、花形の事を聞いてきたのも、理由が分かった。

自分から離れたファンとは言え、たまたま見かけてしまい、心配だったのだろう。

優しい。

それで身バレのリスクを冒して……


「アルティメットの件は、調べてみます。渡せる情報と、渡せない情報がありますが、ご容赦下さい」


「あわ……敬語はやめて下さい。見ての通り、私の方が歳下ですので……多分。若干、老けて見られる事が多いのですが」


老けて?

あり得ない。

化粧や服装のせいかも知れないが……高校生にしか見えない。

モノアちゃんは、おそらく実年齢は30代前半。

魔女と言われるレベルだ。


「いえ、大変お若く見えますよ」


「そ、そうですか……?そう言われるのは新鮮ですね」


モノアちゃんは、驚いた様に目を見開く。


「実年齢より若くということは、低学年に見えるという事ですね。もうすぐ小学校を卒業できるというのに、それはそれでどうなのでしょうか」


「大変大人びていらっしゃいますね!?」


まさかの小学校高学年だった。

いや、見た目は高校生、頭脳は大人なのに。

最近の小学生、すげえ。


「……やはりモブさんもそうおっしゃるのですね」


モノアちゃんが頬を膨らます。

流石に、年齢より若く見るのは無理だ。

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