りあとつ!
第10話 住所バレ
さて。
仕事が終わり、帰宅。
え、定時かって?
それ聞いちゃう?
定時だよ。
世の中、仕事が集まる人と、集まらない人がいる。
つまり、そういう事だ。
最近は、白江さんという友人が、良く泊まりにくる。
通勤に便利なのだ。
今日は来ない。
さてさて。
帰って、推しであるモノアちゃんのアーカイブ祭りだ。
徹夜しちゃうかあ?
モノアちゃんは、いわゆるVNIだ。
ネットで、顔出しをせず、絵や3Dモデルに声をあてて配信するアイドル。
SNSも活用し、まさに新時代のアイドルだ。
歌もトークも上手く、優しく、ファンを常に気遣っている。
もう、推すしかない。
ふと。
地面に落ちた、何かに気づく。
何だろう?
……
おいおいおいおい!?
そこに落ちていたのは……ビニールで包まれた、新品の……モノアちゃんのキーホルダーだった。
俺は、誠に遺憾ながら、古参のファンでは無い。
最近知ったにわかだ。
その為、このグッズは、見たことすらない物だ。
無論、自分のポケットに入れるのは、論外。
落としたファンが悲しむに決まっている。
[とある駅の前で拾いました。心当たりのある方は、リプをお願いします。 #天姫モノア]
写真をつけて、SNSに投稿。
良し。
「すみません、お兄さん」
不意に。
可愛い女子高生に声をかけられる。
真面目で、大人しい感じだ。
スマホの画面を掲げている。
映っているのは……俺の投稿。
「このキーホルダーは、君のか?」
投稿してすぐに来たということは、自分でも気づいて探していたのだろう。
しかも、俺のところに直接来たということは、拾うのを見ていたんだな。
「はい。私のです。良かったぁ……」
心底、ほっとした様な声を出す。
「はい。次は気をつけてね」
渡しながら、思う。
知り合いかも知れない。
何せ、配信の同時接続はぎり2桁。
結構、名前を覚えてる。
名乗られたら、おおっとなるかも。
「ですね……そうだ、是非御礼させて下さい」
「え。いや、悪いよ」
言いつつ。
持ってないグッズを、余ってるからという理由で分けて貰えたら……そんな下心がむくむくと。
いや、交換とかでも、買い取っても良いしね。
というか、ファン同士交流も楽しそう。
「ついて来て下さい」
「ああ」
ついていく。
おや。
この方向は……俺の家と同じ。
意外と近くだったりして。
「中に入れて下さい」
俺の家!?
まさか一緒に住んでた!?
いや、近所の子??
どういう事??
「ここでは話せません」
「……ええ」
仕方が無い。
鍵を開け、招き入れる。
居間へと案内──
「洗面所をお借りします。外から帰ったら、うがいと手洗いをしなければなりません。コップも貸して下さい」
……そうだね、大事だね。
みんなも、うがい手洗いはちゃんとするんだよ!
俺も、手洗い、うがい、と。
改めて。
リビングに案内する。
「それで……一体」
「私がモブさんの家を特定できた理由ですが」
モブ──俺の、ネットで使っている名だ。
やはり、モノアちゃんのファン……
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