第9話 男女の友情は成立する

「お帰りなさい、貞雄さん。お疲れ様です。お風呂になさいますか?ご飯になさいますか?それとも私ですか?」


なんと、まだ起きていた。

……申し訳無い。


お風呂か、ご飯か、一緒に映画見るかのお誘い。


「ありがとう。帰って人がいるって、ほっとしますね」


「ふわっ!?あう……ずるいです、不意打ちは」


何か駄目だったらしい。


「白江さんも映画見たいですよね。ご飯頂きながら、映画見ましょうか」


「あ、いえ。映画はまた明日とか、休日でも大丈夫です!」


純粋に出迎えの為に起きていてくれたのかな。

申し訳無いけれど、嬉しい。


白江さんは、通勤が長い事に、心底まいっていたらしい。

週に数日は、うちに泊まる様になった。

週末にうちに泊まる週もある。

その時は、せっかくなので、2人で遊びに行ったりしている。

推し活は推し活、友人との時間は友人との時間。

そういったバランスも保てていると思う。


男女の友情は成立するか?

する、断言できる。

俺たちがそうさ。

白江さんに話題を振ると、笑顔で言い切った。


「成立する訳無いじゃないですか」


照れ隠しバレバレ。


白江さんは、職場での存在感が増してきたらしい。

アイドル衣装への路線変更。

幾人かのアイドルの衣装が、白江さんプロデュースらしい。

VNIの衣装デザインの仕事もしているとか。


部長の家に行くのは、断り続けている。

ただ、時々会議室で交流会はする。

悪くはない。


モノアちゃん配信、週に1回、1時間程。

アーカイブ視聴は週に数本、何度目かの視聴。


花形は、交流が無いから分からない。

会社には来ているが、元々俺以外とは交流が無かったから、孤立が完璧で究極になっている。

社内の噂だと、家庭でも様子がおかしいらしく、会長がかなりご立腹らしい。


変わらない日常。

平穏な日々。


そして。


「すみません、お兄さん」


女子高生?

可愛い女の子に、駅前で声をかけられた。

手に、スマホの画面を──かざして──

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