第8話 デートと本音

先輩と肉体関係を築いてから、先輩からの連絡は増えた。


仕事のこと、愚痴や家族の悩み、今楽しみにしていることなど色々と共有した。


「次、いつ飲みに行きます?」


先輩が飲みに行こうと言うと決まって僕らはセックスをした。


居酒屋で2人ほとんど酒を飲まず、メッセージでやりとりしたものと同じような内容を一通り話すと、


「そろそろ2人きりになります?」


の合図とともにホテルへ向かった。


先輩は僕のあそこを見るといつも、ふふふと笑った。


「やっぱり大きい…!」


ニヤニヤと嬉しそうな恥ずかしそうな顔でいつも言っていた。


「そういえば、最初にやった時、やっぱり大きいんだみたいなこと言ってましたけど、僕のアソコ大きいと思ってたんですか?」


「あー、そうね。ていうか、多分みんな気づいてるんじゃないかな。だって僕くんのあそこ…」


と、ここまで言うとゲラゲラと笑いだした。


しばらく笑った後、


「すみませんね…。でもいつももっこりしてるんだもん。誰だって分かるよ」


「え、わかります…!?目立たないようにしてたんだけどな…」


「ああ、毎日じゃないですよ。たしかにあまり気にならない日もあった。でも普通にその辺で立ってる時とか、よく見ると変な膨らみがあるんだもん、わかるよ」


「…うーん、まあ、たしかに時々視線は感じますけどね」


「あ、感じるんだ!?」


「わかりますよ、岡本さん見てるなあっていう時ありましたもん」


すると大声で岡本さんは笑った。


「そうなの?ごめんね。でもほんと気になっちゃって」


「いつから気づいたんですか?」


「え、僕くんに会ってわりとすぐかな。でも、しばらくはあまり気にしてなかったの。あ、なんか形がわかるぞ?っていうくらいだったの。でも、何年か前に一緒に出張に行ったでしょ?その時僕くんも私も私服でさ、私の部屋で打ち合わせしたの覚えてるかな。その時、パッと下半身に目がいったの。その時はたまたまよ!?そしたらさ、すごい膨らんでたから、きっと本当に大きいんだろうなって思ったら、もうそれからずっと気になっちゃって。ごめんなさい、気づいてたのよね、見てるの…」


「あー、あの時ですか。たしかに言われてみればなんか視線感じてた気します」


「あと、救急訓練の時かな。仰向けになってやる訓練の時、すごい膨らみが目立ってたよ」


「なるほどです笑」


「ごめんなさい、気持ち悪いですよね。でももともと僕くん素敵な人だなと思ってて、別に下心から声をかけたとかではないの…」


自分が言っていることに気がついて慌ててフォローする岡本さん。


素直な人だなと思いつつ、僕は年に何回か女性からの視線を感じるからさほど気にしていなかった。やっぱり見られてたのかという感想くらいしかなかった。


「正直、時々街中でも女性の視線感じるんですよね。だから別に気にしてないですよ。でも、なんか毎日のように見ていらっしゃったのは少し驚きです」


「ああ〜…ほんとごめんなさい」


顔を真っ赤にして恥ずかしそうに先輩は話しを進めた。


「もう正直に話しちゃうと、ホテルで2人きりになった時、私あの時から僕くんのことを意識するようになっちゃって。出会った時からかわいらしいって言ったら怒られちゃうかもしれないですけど、でも、すごくタイプだなと思ってたんです。でもいけないと思って意識しないようにしてたんです。でもね…」


「でも?」


「ホテルで2人きりになったら急に緊張してきちゃって、しかもあそこが膨らんでるでしょ?別に僕くんは興奮してたとかじゃないとは思っていたんだけど、なんだかすごいドキドキしちゃって…。あの時からかなあ、いつか僕くんとデートしたいなって…」


「そうだったんですね。まあ、確かにあの時は僕も少しドキドキしました。男女で2人きりでホテルの部屋にいるって状況だけで少し特別な感じになりますよね」


「うん、まあ、それもあるんだけど…」


「?」


「知っているかもしれないんだけど、私離婚してるのね。何年か前にお付き合いしていた人もいるんだけど、もう結構、だから…なんていうか、人肌恋しかったていうのもあるの…」


「そうだったんですね…」


僕は既に若手会でなんとなく聞いてはいたが、知らなかったふりをした。


「私だって性欲ないわけじゃないし、でも好みでもない人とやるのもねえ?むしろこの数年ずっと人肌恋しかったんです。ごめんなさい、僕くんに甘えたいとかそういうわけではないんだけど。僕くんのことはやっぱり素敵だなと思うし…。ごめんなさい、何を言っているかわからないよね。とにかく、こんなおばさん僕くんは嫌だよなと思うとなかなか言い出せなくて」


「そうだったんですね。たしかに誰にだって性欲くらいありますよね…。でも岡本さん綺麗だしスタイルいいじゃないですか。他に良い人はいなかったんですか?」


「数年前に少し付き合ったことはあるけど、すぐ別れたの。おばさんだからあまり相手してくれなかったのかな」


僕はなんだか申し訳ない気持ちになった。僕も付き合えるかといえば付き合えるとは言えない。


身体の関係がやっとだ。


でも、それだと悪い気がした。


多分この人は純粋に人を愛して愛されたいんだと思った。自分の子どもや親からだけでなく。


僕はこの人に何かできないか、少し悩みはじめた。



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