第4話 2人きり

入社して一年が経つ頃、僕は初めての海外出張に出された。


行き先は東アフリカの国々。


一緒に行くのはペアの先輩、岡本さんだった。


現地のホテルに到着して、一休みした後に出張内容の打ち合わせをホテル内のレストランですることになった。


その日は日曜日で駐在員には悪いからと2人きりの打ち合わせだった。


シャワーを浴びて、レストランに向かい、岡本さんを待った。


待っているとレストランは大型スピーカーやマイクの運搬で賑わい出した。


どうやら何かのイベントがあるらしかった。


岡本さんが来ると、騒音とイベントを懸念して場所を移すことにした。


ロビーはなぜか人でいっぱい。


外に出てもレストランやカフェは近くに見当たらない。


夕方ということもあり、外出は避けることにした。


「仕方ないから私の部屋で打ち合わせします?」


岡本さんが提案した。


僕は一瞬戸惑った。


え?いいの?男と2人きりで…。


なんて緊張しながらも岡本さんの部屋に行くことにした。


ベッドに座ってくださいと言われるまま、ベッドに座ると先輩もベッドに座った。


横並びで資料を広げて何事もないように打ち合わせは始まった。


僕は少し緊張していた。こんな綺麗な人と2人で密室にいることに。


先輩はどう思っていたのかわからない。


でも僕はずっとドキドキしていた。


ひょっとして何かあるのではないかという期待すらした。


若手会の時に言われた


「岡本さんは歳下好き」

「僕くんはタイプかも」


という言葉を思い出した。


何もないまま打ち合わせが終わると、僕は拍子抜けした。


正直、少し期待していた。


レストランの様子を見に行こうということになり、2人で一緒に部屋を出た。


少し緊張がほぐれた。


ただ、部屋を出る時、一瞬先輩の視線が僕の股間に行った気がした。


僕は下半身が興奮していないことに少し安心したが、同時に少し違和感を覚えた。


なぜわざわざ股間に視線を送ったのか。


割とあからさまに僕の股間は視線を送っていたが、気のせいなのだろうか。


モヤモヤしながらも気にしないことにして、レストランへ歩き始めた。


レストランは案の定なにかのイベントで占拠されていた。


仕方なく、暗くなりつつある夜道を2人で歩いて近場のレストランで食事をとった。


最初からこうしてればよかったのでは?と思いつつも、とにかく歩いた。


意外と距離があったので少し夜道を歩くことに不安もあったが、なんとかたどり着いた。


これが初めての2人での食事だった。


僕らは他愛もない話をして2人でホテルに戻り、何事もないまま、その後も仕事に専念した。


僕は無駄に緊張してしまって、少し恥ずかしかった。

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