第11話 トレントと勝負
「ここが迷いの……森?」
俺は目の前に広がる森を見て、思わずそう呟く。
俺の知っている迷いの森はこんな禍々しい場所ではなかったはずだ。
この森には綺麗な花が沢山あり、とても美しい森だったはず。
しかし今俺の目の前に広がるのは、木が枯れて、草も生えていない不毛な大地だ。
まるでこの森が死んでいるような感じがする。
「師匠、おそらくトレントがこの森に影響を与えているんだと思います。トレントは木を枯らす力がありますから、その影響でこの森が枯れてしまったのでしょう」
確かにそう考えるのが一番自然だ。
しかし、ここまで森を枯れさせるほどの影響があるなんて……これは思っていたより厄介な依頼かもしれないな。
俺の知っている原作では、ここは綺麗な森で魔物もあまりいない。
初心者冒険者が修行に使えるような所だった。
だが、今俺の目の前に広がるのは枯れ果てた大地だ。
俺はこの光景を見て、少し不安になる。
(原作で魔物を変異化する事が出来るのはあいつしかいない)
「アリスか……」
第二王女、アリス・レット・ハーキム。
彼女は魔物を変異化させる能力を持っている。
アリスの能力はその対象の魔物に魔力を流し、その対象の魔物を変異させるという能力だ。
そして最終的にリアを暗殺し、主人公のアデルと王位争いをするという展開。
正直、俺はアリスの事は好きじゃない。
原作でも、悪役令嬢と言われる位には性格が悪い奴だったからだ。
少し嫌な過去を思い浮かべてしまったが、今はこの依頼をこなす事が第一優先だ。
俺は依頼に集中するべく、頭を切り替えて集中する。
「取り敢えず奥に進んでみよう。何か手掛かりが掴めるかもしれないしな」
「分かりました、師匠」
俺たちは森の奥に進んで行く。
すると、少し開けた場所に出てきた。
日は沈みかけているが、暗視できる俺達はこの状態でも十分に戦える。
そんなことを考えていると、奥の方から複数の足音が聞こえる。
俺らはその足音が聞こえる方に視線を向けると、そこには三体の巨大な魔物がこちらを睨んでいた。
その魔物は全身が木でできており、手と足が異様に太く長い、まるで樹木の化け物だ。
A級冒険者でも倒すのは難しいとされている魔物だ。
しかも三体も現れるなんて……これは少しまずいかもしれないな。
「クレハ、初級魔法のファイアボールは唱えられるか?」
「はい、初級魔法ならある程度発動出来ます」
トレントの弱点は火属性の魔法だ。
もしクレハが火属性の初級魔法を使えるならば、トレントの弱点をつける。
一応剣でも戦えるが、トレント相手だと相性が良くない。
出来れば魔法で倒してしまいたい所だな。
俺はクレハに小声で作戦を伝えると、魔法の準備に入った。
すると一体のトレントが動き始める。
「ヴォォォォォ!」
「目の前のトレントは俺が潰す、残りの二体は任せるぞ」
俺の目の前に一体のトレントが走って向かってくる。
なぜ俺がこのトレントに狙いを定めたかというと、クレハに任せた二体のトレントは少し小さいのだ。
それに比べて俺が対峙するトレントは、おそらく普通の個体の何倍もの力を持っているのだろう。
おそらく変異した個体で、通常の個体とは全く別物だろう。
俺は魔法を唱える為に詠唱に入る。
〈燃え盛る炎よ・球となりて・全てを灰とせ〉
俺はファイアボールを放つ。
その球はトレントに直撃するが、あまり効いていない様子、だがそれも想定内だ。
この一撃で倒せたら魔法の練習にもならいからな。
トレントは俺の魔法を受けてこちらに進んでくる。
俺はじっくりと右手に魔力を集め、トレントを待ち構える。
「ガァァァァァァ!!!」
《上級魔法 火槍》
俺の手から放たれた炎の槍はトレントを貫く。
俺が今使った魔法は上級魔法、大量の魔力を必要とするが、威力はトップクラスだ。
この火槍はA級の魔物にも有効な魔法だ、いくらトレントと言えど無傷でいられるはずがないだろう。
すると俺の予想通り、トレントの体は炎に包まれながら、地面に倒れ動かなくなる。
「流石は上級魔法、変異したトレントを一撃で倒せるとは……」
正直、俺は実践で上級魔法を試したのは初めてだ。
基本は初級魔法か中級魔法で魔物は倒せるからな。
そう考えていると、後ろで大きな音が響く。
俺はとっさに振り返りると、クレハがトレントを一体倒したようだ。
初級魔法のファイアボールを使いながら剣で上手く戦えている。
やっぱり剣術の才能がすごいな。
「これで終わりです!」
「グエァァァァァ!?」
クレハの放った一撃により、最後の一体も動かなくなる。
「よし、終わったな」
「師匠、お疲れ様です!」
俺とクレハはお互いを労いながら、笑う。
初めての依頼だが上手く行ってよかったな。
「これで迷いの森の異変も解決したな」
「はい! それじゃあ伯爵に報告をしに戻りましょう!」
俺達はトレントを討伐し、迷いの森の異変を解決して、伯爵邸に戻るのだった。
―――
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