無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい～

第10話 迷いの森

「ここが伯爵家か」

　俺たちは伯爵領に着き、依頼主の伯爵家に来ていた。

　すると執事が俺たちを出迎えてくれる。

「ではこちらへ来てください」

　俺たちは執事に案内され、伯爵のいる部屋へと案内される。

　そして部屋を開けて中に入ると、そこには小太りのおじさんが座っていた。

「おおクレハさん！　依頼を引き受けてくれたのか！」

「お久しぶりです、ブライロン伯爵」

　小太りのおじさんは嬉しそうにクレハに話しかける。

　もしかして知り合いなのだろうか？

「実は以前にもブライロン伯爵の依頼を受けた事がありまして」

　どうやらブライロン伯爵とクレハは知り合いらしい。

　するとブライロン伯爵が俺の顔を見てくる。

「ところでクレハさん、仮面を付けているそちらの方は？」

「この人は私の師匠です、私より強いので、安心してください」

　クレハがそういうとブライロン伯爵は驚いた顔をする。

「それは心強い！　では依頼内容を説明しますね！」

　ブライロン伯爵はそう言うと、依頼内容の話を始めた。

　今回の依頼内容はトレントの討伐だ。

　トレントはA級冒険者が3人ほどいれば倒せるらしいが、最近になって数が急激に増えてしまったらしい。

　そこで今回、S級冒険者のクレハに依頼を出したという訳だ。

「数が増えるというのは、少し気掛かりですね」

　俺がそう聞くとブライロン伯爵は答える。

「はい、実は最近、冒険者の噂で通常のトレントとは違い少し特殊なトレントが確認されていまして」

　特殊なトレントか、それは気になるな。

　魔物というのは突然変異で、通常の個体と異なる性質を持った奴らが現れることがある。

　この特殊なトレントというのはおそらくそれだろう。

　例えば知能が高くなったり、異常なほどパワーが強くなったりすることもある。

　変異魔物となると一筋縄ではいかない。

「そのトレントが目撃された場所は何処にありますか？」

　そう聞くとブライロン伯爵は地図を出して指さす。

　その場所は森の奥深く、かなり入り組んだ所だ。

　そして俺はその森に見覚えがあった。

　この森の名前は『迷いの森』

　主人公のアデルが修行で使っていた森だった。

　そこで本来、クレハと出会うイベントだったはずなんだが、俺のせいでイベントは改変されたということか。

「ここから近いですし、早めに迷いの森に向かいましょう」

「そうだな、早速その森へ向かおう」

　遅くなってしまうと森に着くのは夜、夜の森の怖さは魔物以上に危険だからな。

　俺はそう判断し、クレハに提案に頷く。

　そして俺たちは迷いの森に向かうのだった。

―――

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