第53話 桜

今日は、晴天。

風は少し冷たいが、

日の当たる場所は、

少し汗ばむ気温。

桜は、どこも満開だ。

そして、今日は、診察の日。

午前中に、診察を受けて、

今回も、順調だと、

先生のお墨付き。

花見をしようって、

二人で、同じ事を、考えて、

それが、今日だというのは、

面白かった。

車を、公園に停める。

彼女の作ったお弁当を、

右手に握り、

敷物を、リュックに入れて、

左手は、彼女の手を握った。

どこが、一番いいかなぁ。

幸恵に話し掛ける。


どうせなら、少し上に、

上って見ようよ。

この公園は、少し、

勾配のある、山の様な、

見た目で、緩やかな、

階段があり、上れる様に、

なっている。

幸恵の、手を引きながら、

階段を昇る。

キツく無い?

全然、平気!

わかった。

たまに、声を掛けながら、

昇って行く。


上までたどり着くと、

広場になっていて、

丁度良さそうな、1本の、

桜の木の下に、敷物を敷く。

少し大きめの敷物は、

大人が、四人は、

寝転べそうな大きさだ。

わぁ。桜、綺麗たねぇ。

靴を脱いで、仰向けに、

なって、幸恵が言う。

俺も、靴を脱いで敷物に、

上がると、寝転ぶ。

見上げた桜の木からは、

木漏れ日が、降り注ぎ、

それが、花に当たって、

とても綺麗だった。

本当に、綺麗だね。

そう言って、幸恵の方を、

見ると、仰向けのまま、

目をキラキラさせて、

子供の様な顔で、

桜を見ていた。

俺は、視線を上に戻し、

目をつぶった。

鳥の声。風の音。

耳だけで感じる、

外の景色。

暫くそのままに。

桜の木が、影になって、

たまに、いい風が吹き、

とても、居心地が良い。

これ以上、横になると、

気持ち良くて、眠りそう。

そう、思って、

ふっと、上半身を起こし、

リュックから、

飲み物を出して、

お茶飲む?

と、幸恵に言う。

うん、少し喉かわいた。

彼女も、上半身を、

起こすと、お茶のコップを、

受け取った。

花見なんて、

仕事の付き合いでしか、

した事なかったなぁ。

と呟く。

それを聞いていた幸恵が、

じゃあ、来年も来ようよ、

今度は、三人で、

そう言って、微笑む。

そうだね。三人で。

俺も、微笑む。

お弁当食べようか?

うん。お腹空いたよ。

朝から、

彼女が作ってくれた、

おにぎりを、食べる。

外で、食べると、

美味しいね。

俺が言う。

うん。と返事が、帰る。

桜の木の下で、

昼食を、済ませて。

暫く、二人で桜を、

ゆっくりと、眺めてから、

家路に着いた。

来年は、三人で。

そう想いながら。。。








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