第25話 挨拶

少し、風の強い夕方。

俺は、手に袋を下げ、

歩いて、彼女の家に向かった


家の前には、幸恵が立っていた

誠。お疲れ様。上がって。


お邪魔します。そう言って、

2人で、玄関を上がる。


茶の間に案内されて、

彼女の両親と会う。


初めまして、幸恵さんと、

付き合わさせて頂いてる

誠と言います。と挨拶した。

そして、お母さんに、

紙袋を渡し、

つまらない物ですが、

と、月並みな事を言った。


あらあら、気を遣わなくて

良いのにと、お母さんは

微笑んだ。


お父さんは、少し痩せていて、

椅子に座っていた。

その横には、先日会った、

お母さんが、立っていた。

幸恵は、少し落ち着きなく

ちらちらと、親と、

俺を見ていた。。。

少し空気が変わり


お父さんは、優しい笑顔で、

すまないね。足が、悪くて、

座ったままで。

初めまして、誠君。

今日、仕事納めだったんだね

疲れてるだろう。さ、座って

と言ってくれた。

幸恵は、ほっとした表情。


お母さんは、

ご飯食べて行ってね。

ニッコリ笑って。迎えてくれた


お父さんと、お母さん、幸恵

仕事の話し、出会いの話し

和やかに時間が、過ぎた。。


そこで、お父さんが切り出す、

誠君。。

幸恵を、宜しくお願いします。

と、頭を下げて、続けた。

幸恵には、色々と、寂しい

思いをさせたかもしれない

色々、辛い思いを、させたかも

知れない。でも、私達が、

精一杯育てた子供なんです。

どうか、

幸せにしてあげて下さい。。


本当に気持ちの入った言葉が

ぐっと、俺の心に刺さる。。

幸恵が、少し声を震わせ、

お父さん、お母さん

私、一度も言わなかったけど、

本当、大切にしてもらったよ。

幸せにしてもらったよ。

寂しくなんて、無かった。

辛くなんて無かった。

うっすら、涙を浮かべて

そう答えた。


お父さんとお母さんも、

少し、涙目で。

うん。うん。と、頷いた。


その中で、

俺も、口を開いた。。

お父さんとお母さんに、

負けないくらい、幸恵を、

大切に守ります。

幸せにします。。


そう言うと、お父さんは、

痛いはずの足を、

引きずるように立ち上がり、

俺を抱き締めてくれて、

ありがとう。ありがとう。

と、連呼した。


俺は、そっと、お父さんを、

席に座らせて、

手を握った。


俺は。。

心の中で、ああ、親って

こんなに暖かいんだなぁ。。

そんな事を思っていた。

知らないうちに、俺も涙目に

なっていた。

ああ。。本当に、暖かい家族

こんな、家族を作れたら

いいなぁ。。と思った。


そこに、お母さんが切り出した

お父さんとも、話したんだけど

誠さんが、会ってみて、

良い人だったら、

まず、同棲したらどうかって。

誠くんが、良ければだけど。


幸恵が、すっと出て、

お母さん、だって。


幸恵を制止するように、

お母さんが続ける。

ゆきちゃん、お父さん、

お母さんも、もう若くないわ、

だからね、安心して、

ゆきちゃんを、任せられる人

見つけて欲しいの。

それで、こんなに良い人なんて

そうは、いないと思うの。

お父さんと、お母さんを、

安心させて。

誠くんは、どう?


俺は、構いません。

むしろ嬉しいけど。

幸恵は?


幸恵は、うん。わかった。

私も、誠の側にいたい。。


じやぁ、決まりね。

お母さんが、微笑む。


こうして、2人の同棲が、

始まった。。。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る